日本版「足病医」が足のトラブル解決

日本人は「外反母趾」になりやすいって本当でしょうか?

写真はイメージ
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 2019年、職場におけるハイヒール規定の廃止を求めて、SNS上で「#KuToo」というハッシュタグが拡散されたのを覚えていますか? 半年間で約1万8000筆の署名が集まり国会でも取り上げられ、日本航空(JAL)が女性客室乗務員に対するパンプスの着用義務付けをやめるなど、大きな社会問題になりました。

 長時間、パンプスやハイヒールなどの先が細い靴やヒールの高い靴を履く習慣があると、つま先に荷重がかかったり、圧迫されて足の親指(基節骨)が小指側にくの字に曲がる「外反母趾」になりやすいと言われています。ある報告では、およそ23~35%が外反母趾を患っていて、6.5%ほどが疼痛を伴うと言われています。ただ、変形が軽く、痛みもなければ病院に行かないので、実際はもっと多いと考えられます。男女比は1:9で圧倒的に女性に多くみられます。

 外反母趾の原因は先述した靴などの外的要因と足指の形、扁平足、関節の緩みなど内的要因があります。足の形態は、足の親指が一番長い「エジプト足」と、人さし指が一番長い「ギリシャ足」、全ての指の長さに差がない「スクエア足」の3つに分類されます。日本人の約8割はエジプト足といわれています。そのため日本人は外反母趾になりやすい傾向にあります。

 先細の靴を履いた際、親指が長いと内側に指が寄りやすく、変形して靴に当たって赤く腫れたり、内側に突き出した足の親指や足の裏にタコができます。すると、歩くたびに靴にタコが当たり「痛くて歩けないからタコを切除してほしい」とみなさん病院を受診されます。

 しかし、外反母趾変形が原因でタコができるので、タコだけ削っても、大本の原因である外反母趾を治さないとタコは何度もできます。外反母趾変形により、横アーチが破綻してくると歩いた際に足の裏での荷重分散ができず、床に接触する部分に圧がかかってタコができてくるのです。

 外反母趾は変形が目で見てすぐに分かりますが、診断はレントゲン画像を用いて行います。

 通常、レントゲン写真は横になった状態で撮りますが、足や足首の場合、足に体重がかかるよう立った状態での撮影が有用です。画像から「外反母趾(HV)角」と呼ばれる第1中足骨と第1基節骨の角度を測り、HVが20~30度なら軽症、30~40度は中等症、40度以上は重症と診断します。

 外反母趾がどんなに重症でも歩けなくなることはほとんどありませんが、歩行時に痛みを伴い、転倒リスクが増すと言われています。転倒は骨折にもつながり、骨折部位によっては、生活活動性が下がってしまうため、高齢者にとっては非常に重要な問題です。次回は当院で行っている外反母趾の治療についてお話しします。

田中里佳

田中里佳

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

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