花粉症専門医に聞く(3)重症花粉症向けの薬を使う前に確認すべきこと

自分に合った薬を選べていない人が多い
自分に合った薬を選べていない人が多い

 重症者向けの薬が登場したのは2020年。「ゾレア」という皮下注射の抗体治療薬です。非常に効果が高い薬ですが、しかしゾレアを考える前に、従来からある薬が本当に効かないのかを確認すべきです。

 というのも、ゾレアが必要なほどの重症花粉症は、全体の10%ほど。「薬を飲んでいるのに効き目がイマイチ」という方のほとんどが、「薬を正しく使えていない」もしくは「自分に合った薬を選べていない」になります。

 まず「薬を正しく使えていない」について。

 薬は使い始めて効果が出るまで1週間ほどかかります。そして花粉の飛散期間中は毎日決まった時間に薬を投与し、薬の成分の血中濃度を一定に保つ必要があります。

 症状が重篤になってから使い始めたのでは、1種類では効き目が弱いかもしれません。

 次に「自分に合った薬を選べていない」について。

 花粉症の薬は種類が多く、それぞれ得意とする症状が異なります。

 くしゃみや鼻水がひどい典型的な花粉症には抗ヒスタミン薬。鼻詰まりには抗ロイコトリエン。抗ヒスタミン薬の中にも、鼻詰まりに強い薬もあります。鼻の症状には鼻噴霧用ステロイドも効果的ですし、目のかゆみには点眼薬を使うべき。

 すなわち、同じ花粉症でも、Aさんは抗ヒスタミン薬だけでOK、しかしBさんはそこに抗ロイコトリエンをプラスした方がいい、Cさんは抗ヒスタミン薬に鼻噴霧用ステロイドが合っている……など「最適解」が異なるのです。

 抗ヒスタミン薬にしたって、いろんな薬がありますから、AさんとBさんとでは効く薬が変わってくるかもしれません。また、薬を飲んだりすることが面倒という人には、貼り薬もあるので、検討してみるといいですね。

 花粉症は、この治療にたけた耳鼻咽喉科医とタッグを組んで真摯に向き合えば、ほとんどつらさを感じずに花粉症シーズンを過ごせます。

 しかしそれには、ふさわしいタイミングで動き始め、どの薬が合うかを医師と共に探っていく、ちょっとした「努力」が必要。完全受け身ではダメなのです。

 ゾレアについては次回説明しましょう。(つづく)

▽大久保公裕(おおくぼきみひろ) 日本医科大学大学院医学研究科頭頚部感覚器科学分野教授。奥田記念花粉症学等学術顕彰財団理事長。NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会理事長。

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