今回は外反母趾の治療についてお話しします。
軽症の外反母趾であれば、インソールの着用のほか、床にタオルを置き足の指で引き寄せたり、両足の親指に太めの輪ゴムを挟んで引っ張り合う「ホーマン体操」といった保存療法で症状は改善できます。
一方で、HV角が40度を超す重症例で保存療法の効果が弱く、親指と人さし指が重なる(クロスオーバートー)変形が見られる方は手術を検討します。患者さんが手術を希望する理由として、靴が履けない、骨の突出が痛い、タコが痛いなどいくつかあります。一番多いのは、タコが痛いという理由です。
手術法は150種類以上あり、大きくは関節を残す「温存術」と、関節を切り取るか、または固定する「非温存術」の2つに分けられます。関節を切除や固定してしまうと、歩行に重要な踏み返し(足の指の関節を曲げる動作)ができなくなるため、当院では可能な限り関節「温存」を目指しています。症状や角度、関節弛緩性から術式を選択しています。
手術はブロック麻酔で行うため、食事制限なく、尿の管も不要なケースがほとんどです。患者さんは目が覚めたまま手術を受けるので、動画を見たり小説を読んだり音楽を聴いて過ごされています。
術後はしばらく「歩けないのではないか」という質問をよくされますが、ベッド上での安静は必要なく、手術当日は術前も術後も車椅子で、翌日から医療用サンダルを履いて歩いてもらいます。
また、末梢の血流を良くするために、すべての足指の間にガーゼを入れて包帯を巻く包帯圧迫固定を入院中に練習してもらい、退院後もご自身で6週間ほど続けてもらいます。さらに、手術で矯正した骨がズレないように踏み返し動作は厳禁なので、医療用の厚底サンダルを8週間ほど着用する必要があります。
足は血流が悪く、手術によるむくみが引くまでに3~6カ月ほど時間がかかります。また、手術により足の形が整ってアーチが再建されると、タコも3~6カ月ほどで消えていきます。ただ、外反母趾の手術は再発率が3~13%と比較的高い。矯正した骨が完全にくっつく(骨癒合)には約6カ月かかるので、その間に足指の体操や適切な靴を履くことが重要です。
足はなかなか人目に触れません。足の状態を確認し、バニオン部(親指の付け根の突出部)が腫れている、タコができているなら一度、整形外科(足の外科医)を受診してみるといいでしょう。
日本版「足病医」が足のトラブル解決