腕が痺れてつかめない…「胸郭出口症候群」を見逃さない3つの方法

ルーステスト
ルーステスト(C)日刊ゲンダイ

 電車で吊り革をつかもうとしたら腕が痺れる。手に力が入らない──。そんな症状で悩んでいる人は「胸郭出口症候群」かもしれない。見逃されやすくクリニックを渡り歩く人も少なくない。どうしたらいいのか。「のじ脳神経外科・しびれクリニック」院長の野地雅人氏に聞いた。

 30代の女性は、スマホを見ていると腕が痺れて手に力が入らない症状で悩まされていた。痺れの症状から脳神経外科を何度も受診していたが、診断がつかず半年間そのままに。やがてスマホの操作ができないほど痺れや脱力が悪化したため、のじ脳神経外科を受診し、胸郭出口症候群と診断された。

「脊髄から手や腕に向かう神経はいくつかあり、それらは腕神経叢という束になって鎖骨と第1肋骨の間にできた『胸郭出口』と呼ばれる隙間を血管とともに通ります。人によってはスマホを操作したり、重いカバンを肩にかけると、肩が下がって腕神経叢や血管が圧迫され、痺れや痛みの症状が現れる場合があるのです」

 神経が圧迫されている場合、小指側の手や指に痺れが強く現れる。一方、血管が圧迫されていると血行不良で指先が紫色に変色したり冷たくなり、痛みが生じる特徴がある。

 とりわけ注意したいのが、なで肩の女性だ。胸郭出口は肩甲骨回りを吊り上げる僧帽筋によってスペースが保たれているが、僧帽筋の筋力が弱いなで肩の場合、肩の高さが低くなり神経叢が圧迫されやすい。

「さらに女性は男性に比べて筋力が弱いので胸郭出口症候群になりやすい体の構造をしています。当院でも女性の患者さんは男性と比較して4~5倍多く受診されています」

 日常生活を送る中で、手指や腕の痛みや痺れが悪化していないか。次の方法でチェックしてみるといい。

■モーレーテスト

 上を向いた状態で両側の鎖骨の上を指で圧迫する。腕に痛みや痺れがあると腕神経叢が圧迫されている可能性が高い。

■ルーステスト

 胸を張った状態で腕を肩の高さまで水平に上げ、肘を上向きに90度曲げたまま30回グーパーを繰り返す。手指の痺れや前腕のだるさがあると血管が圧迫されている可能性が高い。

■エデンテスト

 胸を張った状態で両腕を体の横に垂らし、後ろ下に引っ張ってもらう。手指に痛みや痺れがあると腕神経叢が圧迫されている可能性が高い。

「エデンテストは狭くなった胸郭出口を物理的にさらに狭める検査なので、症状が現れれば陽性率はかなり高いと言えます。これらのテストが陽性であれば、神経の活動性を見る神経伝導検査や、胸郭出口の血管や神経の状態を確認するためにMRI検査を行い、最終的に診断しています」

 野地氏によると、胸郭出口症候群と診断された大半は、肩回りの筋肉を鍛えたりストレッチにより筋肉を柔らかくしたりするだけで症状が改善されるという。なで肩が原因の場合には僧帽筋強化のトレーニングが有効だ。自宅で行う場合には、2リットルのペットボトルに水を入れて両手で1つずつ持ち、ばんざいした状態から肘を90度曲げた状態で肩の高さまで両腕を下ろし肩甲骨を寄せる。その際、肘を落とし過ぎるとかえって胸郭出口が狭まるので注意したい。

「それでも痛みや痺れが悪化する場合には、腕神経叢の炎症を抑えるブロック注射や、胸郭出口を狭めている前斜角筋など圧迫構造物の切除手術が検討されます。ただ、発症から長い時間放置していると神経自体が損傷し、手術を行っても痛みや痺れは完全に除去できません。悪化させないためにも早めに診断を受けることが大切です」

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