高齢者の中には、複数種類のクスリを服用している方もいらっしゃるでしょう。改めてクスリを見ていただくと、表面がツルツルしていて光沢がある錠剤があると思います。そういった錠剤は「コーティング」されているために、そんな見た目になっています。
コーティングするにはある程度の費用がかかるため、それをするちゃんとした理由があります。代表的なものとして、とても苦い成分であるためにそのままでは服用しづらいクスリが挙げられます。誰だって苦いクスリは飲みたくありませんよね。そんな場合、クスリの表面をコーティングすることで服用する際に苦みを感じにくくなり服用しやすくなるのです。こういったコーティングにはほとんど味がしないフィルムコートと、甘い味がする糖衣があります。
他にも、成分が光や水分の影響を受けやすいクスリもコーティングされています。コーティングすることで直接光や水分がクスリの成分に接触しなくなるため、それらによる影響を回避でき、長期間クスリの効果を維持することが可能になります。これは同時に、長期間クスリを保存することができるということも意味しています。
特殊なコーティングもあります。クスリの多くは胃で溶けて、小腸などから体内に吸収されることで効果を発揮しますが、中には胃で溶けてほしくないクスリもあります。胃酸で分解されるものや、胃にダメージを与えるものなどが該当します。それらは、小腸から分泌される腸液で溶けるようなコーティングがされています。これを「腸溶錠」といい、小腸に到達するまでコーティングによって溶けることがないため、前述したデメリットを回避できます。
さらに、クスリの成分が溶け出すのをゆっくりにしてくれる特殊なコーティングもあります。このコーティングがされているクスリは、1回の服用で長時間効果が持続するという特徴があり、1日の服用回数が少なく済むようにできます。こういった特殊なコーティングがされているクスリは分割や粉砕はできない場合がほとんどです。
コーティングされているクスリのほとんどは錠剤なのですが、カプセルや顆粒(かりゅう)にもコーティングされているものがあります。ただし、カプセルの場合は厳密にはカプセルそのものではなく、その中に含まれている顆粒がコーティングされており、その理由のほとんどはクスリの成分が溶け出すのをゆっくりにするためです。
普段、何げなく服用しているクスリですが、中身(成分)だけでなく外側にもさまざまな工夫が施されています。改めて自分が服用しているクスリをよく観察してみてはいかがでしょうか。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方