白髪を科学する(1)50代で「なし」は珍しい

白髪を隠さず活躍している吉川晃司
白髪を隠さず活躍している吉川晃司(C)日刊ゲンダイ

 白髪を隠さず活躍している有名人といえば、フリーアナウンサーの近藤サトさん、歌手で俳優の吉川晃司さんを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、一般の人は白髪は年寄りくさいと敬遠され、染めるなどして隠して生活している。そもそも白髪とはどのようにして生えてくるのか? 治せるのか? 資生堂リサーチセンター(研究所)で主に薄毛、白髪の研究に携わってきた日本毛髪科学協会役員の出田立郎氏に話を聞いた。

「白髪とは髪の毛から色素が抜けて透明になることで髪の毛の表面に光が乱反射して白く見える状態をいいます。個人差がありますが、通常年に1~2%くらいの割合で進行し、後頭部に少なく、黒髪より成長が早く、太く、扁平になりやすい傾向があります。30代後半から40代で出はじめ、50代で白髪が1本もない、という人はほとんどいません」

 もともと髪の毛は無色透明で、色素細胞(メラノサイト)が「メラニン」と呼ばれる色素を生成し、髪が成長途中にメラニンを取り込むことで黒髪になる。しかし、メラノサイトが加齢や遺伝、栄養不足、頭皮の血流不足、紫外線などによりメラニンを作り出せなくなったり、メラニンの材料であるチロシンが不足したり、メラニンを合成するための指令がなかったり受け取れなくなると、白髪になる。

出田立郎氏
出田立郎氏(C)日刊ゲンダイ
鍵を握るメラノサイトサイクル

「そもそも髪の毛は、頭皮の中の毛根の一番下に位置する毛球にある毛母細胞が、司令塔である毛乳頭組織の指示により分裂・増殖して角化したもの。メラノサイトは毛母細胞の周囲に多く存在し、そこで盛んにメラニン色素を量産して毛髪に与えています」

 基本的に、メラノサイトサイクルは毛髪が伸びていくヘアサイクルと同調してメラニンの量や活性を増減している。そのサイクルが加齢などの原因でずれが生じると、メラノサイトを生み出す幹細胞からの供給がされなくなり、毛髪が色素なしで成長して白髪になる。

「脱毛がおこらない場合は加齢により最終的に白髪になりますが、脱毛してしまえば白髪か黒髪かはわからない。なので、俗に『白髪は薄毛にならない』と言われているのです。」 (つづく)

▽出田立郎(いでた・りつろう)資生堂美容技術専門学校非常勤講師、日本臨床毛髪学会監事、日本色素細胞学会評議員、日本毛髪科学協会役員。東京大学大学院卒(理学博士)。1988年資生堂入社。リサーチセンター(研究所)で主に薄毛、白髪についての研究開発に携わる。2019年同社を退社。現在に至る。

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