佐藤二朗も公表 「強迫性障害」は生活に支障が出たら受診したい

佐藤二朗
佐藤二朗(C)日刊ゲンダイ

 俳優の佐藤二朗(54)が公表して話題になった「強迫性障害」。カギをかけたか心配で何度も確認に戻ったり、手が汚れている気がして手洗いを数十回も繰り返すなどで日常生活に支障を来す。受診の目安や治療について「おりたメンタルクリニック」院長の織田宗太郎氏に詳しく聞いた。

 50代男性は、退勤ラッシュ時間に駅構内を歩いていた時に誰かと接触した気がした。相手が怒っているのではないか、ケガしたのではないか、警察に駆け込むのではないか……強烈な不安に襲われ、大きな問題にならないかどうかを確認するため、ぶつかったと思われる相手に当たりを付けて距離をとりながら改札口まで後を追った。その日はそれで済んだのだが、翌日以降から行動がエスカレートする。改札口を出て近くの交差点まで追跡したり、時には相手の家までついていくように……。自分の行動に危機感を覚え男性は心療内科を受診した。

「強迫性障害は、バカバカしいと分かっていながらもある考えが頭から離れない『強迫観念』と、それによる不安を打ち消すために何度も同じ行動を繰り返す『強迫行為』に悩まされるのが特徴です。100人中2~3人に見られる決して珍しくない病気で、多くは20歳前後に発症します」

 症状は主に①つり革やドアノブを不潔と感じ、過剰に手洗いを行う「不潔恐怖・洗手強迫」、②扉の施錠や電気の消し忘れを過剰に確認する「確認行為」、③他人に危害を与えたのではないかと過度に不安になる「加害恐怖」、④入浴や着替えなど決まった順序で行わないと気が済まない「強迫儀式」、⑤リモコンなどの配置に異常にこだわる「物事へのこだわり」があり、いくつも併発している人も少なくない。

「強迫性障害は、脳内伝達物質のセロトニン不足が関わっているといわれていますが、はっきりした原因は解明されていません。真面目できちょうめん、神経質で繊細な性格の人に見られやすく、受験や就職といった環境の変化やストレス、女性であれば妊娠、出産を機に発症しやすい。とりわけうつ病やパニック障害といった他の精神疾患と併発しやすい特徴があり、ある調査では強迫性障害と診断された人の3分の1はうつ病を患っていたと報告されています」

■治療すれば寛解できる

 20代女性は、5年ほど前から自分が考える順序で物事を進めないと不安になり、気が済まない症状に悩まされていた。2年前からは入浴時に体を洗う順番を間違えると最初からやり直すようになり、1回の入浴時間は6時間に及んでいた。そのために働けなくなり、心配した親に促されクリニックを受診。約1年間の治療を受け、入浴時間は1時間に減少した。

「治療は基本的に、セロトニンの働きを強めるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を主体とした薬物療法と、強迫行為をせずに我慢することで不安が薄れていく体験をして行動を改善する暴露反応妨害法を行います。ほとんどの方は日常生活に支障を来さない寛解まで回復し、再発率も1割未満と少ない。ただ、発症から時間がたつほど本人のこだわりが強くなり、治療に時間がかかるので1人で悩まず受診してください」

 さらに強迫性障害は、不潔への不安から家族に対しても過度な手洗いや除菌を強要したり、特定の場所に触れるのを禁じ、家族関係が悪化する恐れがある。

 家族関係の破綻はもちろん、強迫観念や強迫行為により自身が疲れきっていたり、仕事や学業など日常生活に支障が出ていれば強迫性障害の疑いが強いので、心療内科または精神科を受診したい。

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