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【ものもらい】温めると早く治る──?むしろ悪化させる可能性あり

疲れやストレスがきっかけに
疲れやストレスがきっかけに

 ものもらいは、「麦粒腫」と「霰粒腫」の2種類に分類されます。前回の麦粒腫に続いて、今回は霰粒腫についてお話しします。

 霰粒腫は、袋に入った硬いコリコリとした芯があるしこりのこと。おできみたいなもの、と言えばわかりやすいでしょうか。このしこりは医学的には肉芽種と呼ばれており、袋の中身は分泌物。まぶたの中の瞼板という組織の中にできます。

 患者さんの自覚症状としては、充血や目やにが多くなるなどの症状はあっても、痛みやかゆみはあまりないことが多い。ですが、放置すると次第にしこりが大きくなり、外から見てもわかるようになりますし、ゴロゴロとした異物感や痛みを感じることも。

 また、霰粒腫の一種である急性化膿性霰粒腫(化膿性霰粒腫)になると、まぶたが腫れたり、押すと強い痛みを感じるなどの症状が出ます。自壊した場合は、患部から膿が出てきます。

 霰粒腫は、まぶたの中にあるマイボーム腺(まぶたの中に数十個並んでいる油を分泌する腺)からの分泌物(主に脂質)が排出されずに出口で詰まってしまうことが原因で発症します。

 なぜ分泌物が詰まってしまうのか、その仕組みは明らかになっていませんが、疲れやストレスがきっかけとなることはあるようです。なお、霰粒腫も麦粒腫と同様に人から人へ感染することはありません。

 霰粒腫の治療は、切開してしこりを袋ごと取る、つまり手術での摘出です。霰粒腫の周りが炎症を起こしている場合は、抗生物質の飲み薬や軟膏または点眼薬で治療することもあります。

 ステロイドの点眼薬に反応してしこりが多少小さくなることはありますが、袋は残ったままなので根治ではありません。根治したい場合は、手術で袋ごと摘出する必要があります。

 袋がなくならないと、霰粒腫は再発を繰り返すことも多くあります。目の周りなので見た目も気になりますし、最終的に手術で摘出する人が多いです。約15分以内で終了する日帰り手術で、まれに縫合した場合には1週間後ぐらいに抜糸を行います。

 なお、炎症がひどい場合には切開ができないので、いったん軟膏や点眼薬を使用して、炎症が治まってからの手術となります。「切って縫うと、痕が残りますか」と心配される方も多いですが、小さな傷痕なので1カ月くらいすれば、ほとんど目立たなくなります。

 最近、こんな質問をされました。

「ネットで検索していたら、霰粒腫は温めると早く治ると書いてあったのですが……」

 霰粒種は肉芽腫なので温めても治りません。また炎症性の霰粒腫は温めるとさらに悪化することもあります。どちらかというと冷やすほうがいいのですが、いずれにしろ素人判断で処置することはおすすめしません。霰粒腫か麦粒腫かの見極めもありますから、「ものもらい」ができてしまったら眼科を受診するようにしてください。

荒井宏幸

荒井宏幸

クイーンズ・アイ・クリニック院長。医学博士・眼科専門医。医療法人社団ライト理事長。みなとみらいアイクリニック主任執刀医。防衛医科大学校非常勤講師。

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