日本版「足病医」が足のトラブル解決

足の血流障害を自分でチェックできる方法はあるのでしょうか

日頃から自分で足の血流をチェック
日頃から自分で足の血流をチェック

 動脈硬化が進行して足の血流が悪くなると、足にしびれや痛みの症状が現れます。これは「閉塞性動脈硬化症(ASO)」と呼ばれ、血流の低下から足の冷感や、歩いているとふくらはぎが張ったりしびれが生じ、休憩を挟むと症状が治まる「間欠性跛行(はこう)」が現れるのが特徴です。

 ASOと診断される方のほとんどは、間欠性跛行や血流不足による変色(チアノーゼ)で足の異変に気付きますが、中には症状がまったく見られず気付いた時には手遅れのケースが少なくありません。実際、血流障害がある70歳以上の高齢者のうち、20~30%は無症候性といわれています。

 ある80代の男性は、かかとにできた靴擦れの痛みで受診しました。初診のアセスメントで足の血流を測ると、動脈硬化がかなり進行し、血流は悪く血管ももろくなっていたのです。通常、ASOの患者さんには心筋梗塞と同様に血管を広げるカテーテル治療やバイパス手術が適応されますが、残念ながら行えない患者さんもいます。この患者さんはカテーテル治療を実施しても血流の改善が得られなくて、結局、傷口から感染した細菌による敗血症で亡くなりました。

 命を落とさないためにも、日頃から足の血流をご自身でチェックすることが大切です。

 自宅でできる具体的な検脈の方法は、裸足の状態で足の親指と人さし指の真ん中を触り、そこから5センチ程度足首側に下がった位置に指を3本軽く置きます。脈が触れない、左右差があると血流障害の可能性が高いといえます。とりわけ高齢者は動脈硬化が進行しやすく、高血圧やほかの血管の病気があると足の血管も悪くなりやすい。定期的に足の血流検査を受け、ご自身で足の状態を把握しておく必要があります。

 動脈硬化を悪化させないためにも糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病の予防や喫煙は避け、運動習慣を身に付けましょう。中でもふくらはぎは下肢に下がった血液を心臓に戻すポンプの役割を担っていて、この筋力が低下すると血の巡りはさらに悪くなります。

 立った状態で両足のかかとを持ち上げたり、椅子に座った状態でかかとは床に着け、つま先を上げる運動を続けると血流の促進につながります。

 ほかにも、自転車のペダルこぎも有効です。しかし高齢者の場合、道路で運転すると転倒のリスクがあるので、室内用のエアロバイクがおすすめです。

田中里佳

田中里佳

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

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