働き世代 がんになったらお金はどうする~会社員編~(3)高額療養費制度の払い戻しを待てない…

事前申請で最初から自己負担限度額に
事前申請で最初から自己負担限度額に

 中学生の娘がいるBさん(40代)は、抗がん剤治療でしばらく休職せざるを得なかった時、助かったのが、会社が加入する健康保険組合で「傷病手当金(前回の連載参照)」が受け取れたこと、そして「限度額適用認定証」と「高額療養費制度」でした。

 高額療養費制度は、医療機関や薬局の窓口で支払った額が高額となった場合、負担を軽くする仕組みです。

 費用にかかった場合の総額のうち、一般的に70歳未満ではその3割が窓口で払う金額となります。高額療養費制度を利用すると、その窓口で払った金額のうち、決められた1カ月の医療費上限を超えた金額が戻ってきます。

 収入によって自己負担限度額は異なり、70歳未満で年収約370万から770万円の方では、だいたい9万円。たとえば窓口で12万円支払っていたら、12万円-9万円の3万円が戻ってくることになります。1年間の間に高額療養費制度の利用回数が3カ月以上あると、4カ月目からは自己負担限度額が低くなり、前述の年収370万から770万円では、4万4400円となります。

 さて、高額療養費制度については聞いたことがある方でも、限度額適用認定証についてはご存じないかもしれません。

 限度額適用認定証は、事前に申請することで、窓口での支払額が最初から自己負担限度額で済む制度です。

「高額療養費制度はありがたい制度なんですが、払い戻しまで数カ月かかり、それまでの生活費が心配でした。しかし限度額適用認定証の交付を受けていれば、窓口で払う金額が約9万円になる。払い戻しを待たなくていい」(冒頭のBさん)

 限度額適用認定証は、自らの手続きが必要。しかし、マイナ保険証の方は、医療機関がオンライン資格確認を導入していれば、マイナ保険証を提示し限度額情報の表示に同意することで、手続きは不要で最初から高額療養費制度が適用されます。  (つづく)

▽黒田ちはる 看護師としての経験を生かし、看護師FP(R)としてがん患者の家計相談に乗る。黒田ちはるFP事務所代表、一般社団法人患者家計サポート協会代表理事。著書に「がんになったら知っておきたいお金の話」。

関連記事