痛くなるほど足が冷える。夕方になると足がパンパンにむくむ。足腰が急激に衰えた。血圧が高くなった……。年をとって、こんな不調に悩んでいる人は多い。ふくらはぎを鍛え直せば、大きく改善する。
ふくらはぎは「第2の心臓」といわれている。心臓にはポンプの働きがあり、動脈を通して全身に血液を送っている。送られた血液は老廃物や二酸化炭素を回収し、静脈を通って再び心臓に戻ってくるが、その際に重要なのがふくらはぎの働きだ。
人間の血液は、重力の影響でその7割が下半身に集まっている。心臓に送り戻すためにはそれだけ大きな力が必要になるが、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩を繰り返してポンプの働きをすることで、心臓のポンプ作用をサポートしているのだ。「加圧リハビット」水道橋店マネジャーの稲川敏弘氏(日本体育協会公認アスレティックトレーナー)が言う。
「ふくらはぎのポンプ作用は、ミルキングアクションといわれています。ふくらはぎの筋力が衰えるとミルキングアクションがうまくいかなくなり、静脈の流れが滞ってしまいます。血液の循環が悪くなるため、足が冷えたり、むくんだりするだけでなく、全身に悪影響を及ぼします。ふくらはぎの筋力は加齢によっても衰えますが、現代人はクルマに乗ったり、エスカレーターを多用したり、座りっぱなしの人も増えているので、さらに衰えが目立ちます」
ふくらはぎのポンプ作用がうまく働かなくなると、心臓は血液を環流させるためにより大きな力を使って血液を送り出そうとする。その分、心臓や血管に負担がかかり、高血圧や循環器系の病気にもつながってしまう。
逆にふくらはぎを鍛えて血流をスムーズにすれば、冷えやむくみ、高血圧や生活習慣病など、さまざまな体の不調を改善することができるのだ。
中高年でもふくらはぎをしっかりトレーニングできる方法を稲川氏に解説してもらった。
<かかとの上げ下げ>
両足を自然に開いて立ち、そのままゆっくり3秒かけてかかとを上げてつま先で立ち、静止はせずに3秒かけて戻す。これを10回繰り返す。足腰が弱っている高齢者などは、壁に手をつきながらでもOK。
<ふくらはぎ伸ばし>
ふくらはぎの柔軟性を回復させることが大切。そのためには、かかとの上げ下げで使ったふくらはぎの筋肉をしっかり伸ばす必要がある。準備運動する時によく行われているアキレス腱伸ばしのような体勢で、ふくらはぎを伸ばす。足を前後に開き、前の足はかかとを地面につける。後ろ足のひざを伸ばしたまま、ゆっくりとかかとを上げ下げする。1、2、3のリズムで上げて、同じように下げるパターンを左右10回ずつ繰り返す。
「それぞれ10回を1セットとして、慣れてきたら3セットやってみてください。ひどい冷え性を解消するには、ふくらはぎに加えて太ももの筋肉も一緒に鍛える必要があります。その場合はスクワットを加えればいいでしょう」(稲川氏)
ふくらはぎのマッサージも効果的だ。座ったままアキレス腱からひざ裏に向かって、ふくらはぎの中央、外側、内側をそれぞれ揉みほぐしていく。左右30秒ずつマッサージするだけでも効果がある。
健康的なふくらはぎを手に入れれば、健康的な生活を送れるのだ。