電話でも大丈夫! 老親の病気を見抜く会話術10項目

 離れて暮らす老親の体調が心配だ。しかし、子供に余計な心配をかけたくないからと、具合が悪くても何も言わないでいる親は多い。ならば、たまの電話や数少ない会話の中で、老親が抱えている“リスク”をしっかり把握しておきたい。そのためにはどんなことを聞いておけばいいのか。「江田クリニック」院長で、毎日200人前後の患者を診察している江田証氏に詳しく解説してもらった。

「病気の種類はたくさんありますし、専門家ではないのに少ない会話の中から細かい病状や正確な診断を下すのはなかなか難しい。まずは、日本人の死因のトップ3であるがん、心疾患、脳血管疾患のリスクについて把握し、同時に認知症のチェックもしておきましょう。がんは、死亡率が高い肺、胃、大腸に注意してください」

 以下の10項目をたずねれば、ほぼ全身をレビューすることができるという。

(1)「サクラ、ネコ、電車」という3つの単語を覚えてもらう
「長谷川式認知症検査」の質問項目のひとつで、時間を空けてから覚えているかどうかを再びたずねる。

(2)時間、場所を聞く
 認知症は時間と場所が分からなくなるケースが多い。「今日は何月何日だっけ?」とか「前に外食した時、いつどこで何を食べた?」などとたずねてみる。

(3)基本問診
「食事をおいしく食べられているか」「便秘はしていないか」「しっかり眠れているか」の3点を聞く。問診の際に医者が患者に聞く基本的な項目で、どこかに病気が隠れていないかどうかの手がかりになる。胃がんなら食欲不振、便秘がひどければ大腸がん、眠れない場合は心不全、うつ、逆流性食道炎などの疑いが出てくる。

(4)体重が減っていないか
 がんが隠れていないかどうかの手がかりになる。食事制限などをしていないのに、1カ月で2キロ以上、体重が落ちていたら要注意。

(5)体に慢性的な痛みはないか
 同じく、がんの手がかりになる。

(6)血圧は正常かどうか
 脳卒中や心筋梗塞は朝6~10時の間に発症するケースが圧倒的に多い。夜から朝にかけて血圧が上昇する「早朝高血圧」の人は注意が必要。血圧計を準備して、起床してトイレに行った後、1~2分安静にしてから血圧を測ってもらう。最高が135mmHg、最低が85mmHgを超えるようなら、医師の診断を受けさせる。

(7)脈拍が正常かどうか
 心臓突然死や脳梗塞は、心臓が不規則に動く心房細動が原因になるケースが多い。手首に指をあてて自分で測ってもらい、1分間に60~90回なら問題ない。日常生活で動悸や息切れがないかも聞いておく。

(8)健康診断を受けているかどうか
 1年に1回、肺、胃のレントゲン検査を受けているかどうかをたずねる。肺がんが進行すると、咳(せき)が長引いたり、血痰(けつたん)が出たり、胸の痛みといった症状が出るが、その時点では遅いケースが多い。肺と胃の検査はできるだけ受けさせる。

(9)服用している処方薬を教えてもらう
 どんな持病があるか、リスクを抱えているかを把握できる。飲んでいる薬の説明が記載されている用紙をファクスしてもらえば、自分で調べられる。

(10)「サクラ、ネコ、電車」を覚えているか確認
「花の名前、動物、乗り物」など、ヒントを与えてもいい。2つ以上、思い出せれば問題なし。

 最初は手際よくいかないかもしれないが、これが親子で会話するきっかけになれば、自然と老親の健康を把握できるようになる。

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