50代女性はご用心 …急に太った、眠いは「閉経後糖尿病」

 糖尿病は働き盛りの中年男性だけの病気だと思ったら大間違いだ。50歳を過ぎて閉経を迎えると糖尿病になる女性が多い。あなたの妻も気がつかないだけで糖尿病かもしれないのだ。糖尿病が怖いのは、失明やがん、心臓病や脳梗塞などにかかる可能性が高くなること。妻の病気に気づかないあなたの老後は、病気の妻の世話に明け暮れることになりかねない。

 中村賢太郎さん(56歳=仮名)は最近、5歳年下の妻の異変に気がついた。

 ここ数年、やたらと動悸や冷や汗、肩こりなど体の不調を訴えていた妻が、文句を言わなくなったと思ったら急に太ってきたのだ。

「たぶん、以前は更年期障害だったのでしょうね。いつもイライラして私に当たっていたのが、ここ数カ月、急に穏やかに過ごす日が増えて、私にも優しくなったのです。それとともにお尻や太ももなどの下半身の肉付きが良くなって…」

■水分をガブガブ、食べたら眠りこける

 ところが、妻の異変は見た目だけではなかった。お茶や水をやたらと飲むようになり、トイレが近くなって、食後にソファでうたた寝するようになってきたのだ。

「最初は、年を取ったから疲れやすいのだろうと思ったのですが、食事だけでなくおやつを食べるときも、直後に眠りこける。さすがにおかしいと思い、友人の医師に相談したら、“それは糖尿病じゃないか”と指摘を受けました。あわてて近くの内科に連れていったら、空腹時血糖値が200を超えており、糖尿病になっていたのです」

 賢太郎さんは知らなかったが、奥さんは最近、閉経を迎えていた。糖尿病専門医で「AGE牧田クリニック」の牧田善二院長が言う。

「中村さんの奥さんに限らず女性は閉経後に糖尿病を発症しやすいことが知られています。閉経前の女性は皮下脂肪に肉がつき、内臓脂肪にはつきにくいのですが、閉経を迎えると、女性ホルモンが少なくなり、余分なエネルギーが内臓脂肪に蓄積して、血糖を調整する物質が減り、インスリンの効き目が悪くなり、糖尿病を発症しやすくなるのです」

■喫煙、菜食主義、卵巣摘出経験があると40代でも危ない

“オレのカミさんは40代だから大丈夫”という人もいるだろうが、安心はできない。一般的に女性の閉経は50歳前後といわれるが、なかには40代で早期閉経になる女性もいる。
「早期閉経になりやすいのは喫煙者、菜食主義で肉を食べない人、卵巣の手術を行った人です。こういう女性はより早い段階で糖尿病を発症しやすいのです」(牧田院長)

 しかも、女性の多くは定期的な健康診断を受けていないため、男性以上に糖尿病に気づきにくいうえ、腎臓にダメージを受けやすい。

「診断してすぐにインスリン治療というケースもあります。しかも、糖尿病で免疫力が落ちて、細菌が繁殖しやすくなると、尿道が短い女性は、膀胱(ぼうこう)炎になりやすい。それを放っておくと腎盂(じんう)炎になり、腎臓の機能まで低下させてしまいます。そうなると、生死に関わります」(牧田院長)

 閉経で女性ホルモンが減少すると糖尿病になりやすいということは、女性ホルモンに糖尿病を抑える働きがあるのではないか。血液中の女性ホルモンが高い男性は糖尿病になりにくいのだろうか?

「残念ながらNOです。米国のフラミンガム研究で高齢な男性の血液中の女性ホルモンの数値と7年後の糖尿病発症との関係を調べたところ、濃度が2倍になると糖尿病になるリスクが93%増加することがわかったのです」(別の糖尿病専門医)

 中高年男性が最後に頼れるのは、カミさんだ。妻の健康に気を配ることはあなたのためでもあるのだ。

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