ストップ“お漏らし” 「過敏性腸症候群」による下痢は治る!

(C)日刊ゲンダイ
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 Aさん(46)が高尾山を嫌いになったのは、“お漏らし”が原因だった。
 登っている途中、突然便意に襲われた。Aさんはしょっちゅう、同じ経験をしている。いつもはぎりぎりセーフでトイレに間に合うが、山の中は勝手が違う。慌ててトイレを探すも、見当たらない。

 進むか、戻るか? 途中にトイレがあったと思い出し、同行者と別れて戻ることにした。しかし、あと少しというところで“決壊”。泣く泣くトイレでパンツを脱ぎ捨て、ノーパンでその日一日を過ごすことになった。

 Aさんは突然の便意や下痢を“体質によるもの”だと思っていた。ある時、別の不調でかかった医師との雑談で「頻繁にトイレに駆け込む」とこぼすと、消化器内科で検査を受けることを勧められた。素直に従った結果、分かったのは、Aさんの“トイレ問題”は「過敏性腸症候群(IBS)の下痢型」によるもの、ということだった。

■中高生には悩んで登校拒否になる人も

 IBSは、検査をしても消化器に異常がないのに、下痢や便秘を慢性的に繰り返す疾患だ。ストレスなどで自律神経が乱れることで起こる。

 IBSには下痢型、便秘型、下痢と便秘を交互に繰り返す交代型があり、男性に多いのは下痢型だ。きちんと対策を講じれば、「慌ててトイレに……」といったことはなくなる。腸の疾患を専門に診る「松生クリニック」の松生恒夫院長に聞いた。

「当院に来るIBSの下痢型の患者さんは、中高生から大人まで幅広い年齢層です。中高生には、『トイレで排便をするのが恥ずかしい。学校に行きたくない』と思い詰めているお子さんもいます。トイレに間に合わない経験を何度もしたために、同じような状況になると『またお腹が痛くなるかも』と不安が増し、一層症状が悪化している人も……。IBSは治る疾患ですから、早めの対策が肝心です」

 IBSの下痢型には、非常に効く薬がある。「イリボー」だ。
「飲み始めるとそれほど間をおかず、効果が実感できる薬です。ただし、効き過ぎて便秘になったり、膨満感が強くなる人もいます。通常は5マイクログラム服用しますが、効き目が強いようなら、半分の2.5マイクログラムにしたり、2日に1回服用するなど、摂取量を減らすように患者さんに指導します。また、イリボーの承認が下りているのは男性だけ。女性は効果がはっきりと認められておらず、適用になっていません」

 冒頭のAさんも、イリボーで突然便意に襲われることがピタッとなくなった。しかし、松生院長の指摘どおり、膨満感が出るようになった。そこで、電車や車で長時間移動する時や、旅行など、すぐにトイレに行けなさそうな場合にのみ、服用するようにした。「オレは大丈夫」という自信から、次第に薬なしでもOKになった。

■別の病気のリスクも

 薬を飲まなくても、生活の中のちょっとした工夫で症状を抑えることも出来る。

「軽症で、イリボーが必要なさそうな患者さんには、朝食の取り方を指導します。便意に襲われるのは、朝の通勤時が多い。そこで、朝食を取らずに自宅を出てもらい、会社などトイレにすぐに行ける場所に着いてから食事を取ってもらう。『これで朝のお漏らしがなくなった』という患者さんは少なくありませんよ」

 ただ、あまりに何度も下痢などを起こすようなら、別の病気のリスクもあるので、一度、大腸内視鏡で検査を。

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