専門家が指南 熱中症で死なないための「緊急時対処法」

こまめに水分補給/(C)日刊ゲンダイ
こまめに水分補給/(C)日刊ゲンダイ

 熱中症による死亡者や救急搬送される人が続出している。太平洋高気圧の勢力が強まるため、北日本、東日本、沖縄・奄美では8月の平均気温が平年より高いとの見通しを気象庁が発表。このまま厳しい暑さが続けば、熱中症の被害が拡大することは確実だ。もし、近くにいる人に熱中症らしき症状が見られたらどうすればいいか? 改めて押さえたい熱中症対策を横浜創英大学・則岡孝子名誉教授に聞いた。

 熱中症は軽症から重症まで3段階(Ⅰ~Ⅲ度)に分けられる。Ⅰ度は「めまい、立ちくらみ、筋肉痛、汗がとまらない」、Ⅱ度は「頭痛、吐き気、体がだるい、虚脱感」、Ⅲ度は「意識がない、けいれん、高い体温である、呼びかけに対し返事がおかしい、まっすぐに歩けない、走れない」だ。

「意識がない時は、自分たちでなんとかできる段階を超えています。速やかに救急車を要請してください」

 Ⅰ、Ⅱ度で、意識がある場合、さらにⅢ度で救急車を要請しているが到着していない場合は、次のことをすぐに行おう。
 まず、【涼しい場所へ避難させる】。屋外なら木陰へ、屋内ならクーラーの効いた部屋へ。この時、意識がなければ、胃の中の物を吐いた時に喉が詰まらないように横向きに寝かせる。
 次に、【衣類を脱がせ、体を冷やす】。

■首、脇、太ももの付け根を冷やす

「冷やす場所は、首、脇の下、太ももの付け根など、血管が皮膚表面に近いところです。扇風機、うちわなどで冷やしたり、水で濡らしたタオル、袋に入れた氷を当てたりしてください」

 さらに、【水分、塩分を補給する】。水分だけでは汗によって失われた塩分を補給できないので、スポーツドリンクなどを少しずつ飲ませる。ただし、意識がなく救急車を待っているような時は、無理に水分を飲ませない。

「自力で飲めない時は、意識がない時と同様に救急車を呼んでください」

 これら3つが、頭に叩き込みたい基礎知識。熱中症の人の様子を見て、次の方法をプラスするとなおいい。

▼皮膚が青白く、体温が正常

「心臓より足を高くして、あおむけに寝かせ、水分・塩分を少しずつ飲ませてください」

▼皮膚が赤く、熱っぽい

「クッションや衣類を敷くなどして上半身を高くし、座っているのに近い状態にします。そして、とにかく体を冷却。氷で集中的に冷やすのがベストですが、氷がなければ、水を体に吹き付け、風を送って冷やします。アルコールで体を拭くのもいい」

 熱中症は、起こしやすい条件がある。前日より急激に気温が上がった時、アスファルトなどの舗装がされている場所に長時間いる時、残業続きだったり睡眠不足で体の疲労度が強い時などだ。
 都心では日が落ちても気温が下がらず、湿度が高い。やはり熱中症を起こしやすくなる。
「クーラーをつけっぱなしで寝るのは体に毒」などと思わず、熱中症対策のために上手に活用する。

「併せて、寝る前の水分補給も忘れずに。水1リットルに砂糖大さじ4・5杯、塩小さじ0・5杯を溶かしたものなら、体液に近い濃度なので、寝る前に飲んでも夜間のトイレの回数は増えにくく安心です」

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