痛みも変形もなくスポーツもOK 巻き爪はワイヤで治す

健康な歩行(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ
健康な歩行(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 爪が内側に巻く「巻き爪」は、爪が肉に食い込み、痛みのために歩行が困難になる人もいる。高田馬場病院・町田英一医師(整形外科医)によれば、巻き爪はだれにでも起こる。それだけに適切な治療を押さえておきたい。

 町田医師が行っている巻き爪治療は、特殊なワイヤを使って、爪を元の平らな状態に戻す「矯正治療」だ。

「爪の先に2カ所の穴を開け、形状記憶合金でできたワイヤの両端を挿入し、固定し、矯正する。以前は爪の両端に引っ掛ける方法でしたが、爪の縁は軟らかく割れてしまう恐れがあり、穴を開ける方法にしました」

 矯正期間は半年から1年。爪は月に1~2ミリ伸びるので、通常は1~2カ月ごとに外来でワイヤを外して爪を切り、またワイヤをつける。
 治療の痛みは全くなく、治療直後から効果を実感できる。

「炎症を起こし腫れあがっているような時は、米粒サイズのコットンを丸めて爪の下に入れ、痛みを軽減します。巻き爪治療中、やっていけないことはありません。スポーツも問題なくできます」

 ただし、健康保険は適用されない。町田医師の治療を受けた場合、初診料7000円、ワイヤ代4000円、諸治療代1000円がかかる(高田馬場病院以外でも、複数クリニックで治療を行っている)。

■保険適用なら「爪郭爪母切除術」

 巻き爪には、内側に巻いた部分を手術で切除する「爪郭爪母切除術」もある。健康保険が適用になることなどからこちらを勧める医師もいる。

 町田医師は、矯正治療と爪郭爪母切除術(以後、切除術)両方のメリット、デメリットを比較して、慎重に治療法を選ぶべきだという。

「矯正治療は保険非適用というデメリットがあります。さらに、時間がかかる治療法であり、早く治したい人にはデメリットでしょう。一方、切除術は基本的に日帰り手術で、短時間で済む。術後の痛みが問題でしたが、薬剤に浸した綿棒で細胞組織を焼くフェノール法が最近広まり、これなら痛みが少ないです」

 それでも、町田医師が切除術ではなく、矯正治療に重きを置く理由は、巻き爪は再発を繰り返すからだ。

「爪には内側に巻く性質があって、歩行で爪に上向きの力が加わり、平らに保たれている。外反母趾や扁平足があったり、寝たきりになれば、治療で巻き爪を解消しても、また爪は巻いてきます。さらに爪の再生能力は高く、切除術で爪を取り除いても、やがて爪が生えてきて内側に巻きます。しかも変形し、元の形には戻りません」

 日帰りとはいえ、切除術は手術なので、患者に負担がかかる。爪の一部を取り除くので、元の大きさの3分の1程度になり、足にかかった力を分散するという爪の本来の役割を十分に果たせず、「踏ん張りがきかなくなった」と言う患者もいる。

「つらい思いをして手術をしたのに、再発したり、生活に不具合が出てくるのはやりきれない。だから私は、巻き爪治療に関しては『gradually(ゆっくり)』を推奨し、時間はかかっても、負担が少なく日常生活に支障が出ない矯正治療を患者さんに勧めています」

 矯正治療後は、外反母趾や扁平足の改善を行い、適度な運動を行うなど、爪が再び巻くのを避ける努力も必要だ。

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