“3分診療”時代にしっかり診てもらう「7つのキーワード」

写真はイメージ/(C)日刊ゲンダイ
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〈これまでの人生でこれほど熱が出たことはありません……〉。病気で苦しんでいる患者は、不安もあって症状を大げさに伝えがちだ。もちろん医者もわかって対応しているが、自分の感情ではなく、医者が本当に知りたいことを伝えることができれば、早く的確な処置につながるし、誤診の予防にもなる。「3分診療」といわれる時代、短い診察時間でもしっかり診てもらうコツを覚えておきたい。

 日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は、医者に要領よく病状を説明できる医療版「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)として、「L・Q・Q・T・S・F・A」を推奨している。どんな症状でも、アルファベットの頭文字に沿って伝えればOK。例えば腹痛の場合はどのように伝えればいいのか。

■L(Location…痛みの場所)

 どの辺りに痛みがあるのか。腹痛といっても胃だけではなく、胃の周辺にある臓器の疾患が原因になっているケースもある。みぞおち付近が痛むなら、胃の裏にある膵臓、胃の前にある肝臓、胃の右横にある胆のうや胆管の病気の可能性も。

■Q(Quality…痛みの性質)

 ずっと痛いままなのか、痛かったり治まったりしているのか。断続的に痛みが走る間欠痛は、腸が原因のケースが多い。

■Q(Quantity…痛みの強さ)

 昨日の痛みを「10」とすると、今日は「15」くらいといったように、数字で表すと病状の進行が医者にもよく伝わる。

■T(Timing…痛むタイミング)

 どんなタイミングで痛みが出るのか。歩く時に痛みが響く場合は、腹膜炎のサインになる。

■S(Sequence…経過)

 いつから症状が出て、どう推移しているか。

■F(Factor…痛みを悪くしたり、軽くする要素)

 原因疾患を特定するヒントになる。たとえば胃潰瘍は食後に痛くなり、十二指腸潰瘍は逆に食べると楽になる。膵炎は膝を抱える体勢で痛みが軽減し、胆石は脂っこいものを食べると痛む。

■A(Associated manifestations…随伴する症状)

 嘔吐や発熱など、痛みの他にどんな症状があるか。原因疾患を絞り込むために重要な項目。

「『L・Q・Q・T・S・F・A』は、腹痛だけでなく頭痛や他の症状にも応用できます。頭痛の場合、くも膜下出血など命に関わる重大病の可能性もあり、『場所』と『タイミング』が重要です。ある瞬間、突発的にズキンと強烈な痛みが頭全体に走った場合、危険な頭痛としてCT検査が必要になります」

 発熱の場合はどうか。基本は上記7項目の説明で問題ないが、発熱の原因になる病気はたくさんある。ただの風邪によるものなのか、重病が隠れているのか。的確に判断するうえで、「六号通り診療所」の石原藤樹所長は、特に以下を重視している。

◆いつから、どのくらいの期間続いているか。
◆どんなタイミングで熱が上がったり下がったりするか。
◆熱のほかにどんな症状があるか。

 疾患によって、発熱するタイミングや随伴症状は変わってくる。インフルエンザなら急激に熱が上がり、ずっと微熱があってせきも続いているようなら、肺炎の疑いが出てくる。膀胱炎や腎盂炎による発熱は、尿を排出した後に熱が下がり、夜になって尿がたまってくると熱が上がる。

「命に関わる髄膜炎や脳炎といった疾患は、発熱のほかに頭痛、意識障害、けいれんといった症状が出たり、首をスムーズに動かせないほどの痛みが表れるケースもあります。息切れや胸が苦しい症状があれば、ウイルス性心筋炎の可能性が出てきます」

 また、外国への渡航歴、数日前に食べたもの、過去の手術歴があれば伝えておく。これで、3分診療を有効活用できる。

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