使いすぎは禁物…食器洗浄機と温水洗浄便座が病気を呼ぶ

手で洗うほうが細菌を減らす効果は低いが…
手で洗うほうが細菌を減らす効果は低いが…(C)日刊ゲンダイ

 清潔志向が強まる日本では、便利で衛生的な食器洗浄機や、キレイになったと実感できる温水洗浄便座が当たり前になっている。しかし、だからといって使いすぎると、しっぺ返しを食いかねない。

「食洗機を使っている家庭の子供は、アレルギー発症リスクが2倍になる」――。スウェーデンの研究グループがそんな報告を発表している。

 7~8歳の子供1029人を対象に、喘息、湿疹、季節性鼻炎、結膜炎などのアレルギー調査を実施。食器を手洗いしている家庭(全体の12%)の子供は、食洗機を使っている家庭の子供に比べてアレルギーを発症するリスクが約半分であることがわかった。研究者は「食器を手で洗う方が食洗機よりも細菌を減らす効果は低い。手洗いが微生物への暴露を増やし、それが免疫系を発達させてアレルギーを減らす」と予測している。

 家電メーカーの調査によると、全国の食器洗浄機の普及率は28.4%。手洗いでは使えない強力な洗剤や高温で洗うことができるため高い除菌効果があり、便利さと相まって広まっているが、その除菌力が逆効果になりかねないのだ。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏はこういう。

「我々の生活環境には無数の細菌が存在します。空気中にも地表にも土の中にもいて、細菌に囲まれて暮らしているといっていい。そのほとんどが無害なもので、人間に害を与えるような病原菌はごくわずかしかいません。アレルギーを起こすかどうかは、そうした無害な細菌と普段からどうやって付き合っているかで決まります。アレルギー反応というのは、アレルギーの原因物質であるアレルゲンが体内に侵入するとそれに抵抗する抗体が作られ、その抗体に刺激された脂肪細胞が化学物質を放出することによって起こる。無害な菌まで除菌してしまうような清潔志向が行き過ぎた環境で生活していると、細菌と共存する方法がわからなくなり、アレルギー反応を起こしやすくなるのです」

 無菌状態だった母親の胎内から生まれてきた赤ちゃんは、そこいら中をなめて回る。これは、早くさまざまな細菌を体に取り込んで、免疫機能をアップさせなければならないからだという。

 我々の生活環境に、そこまで恐れなければならない病原菌はまずいない。まったく細菌がいなくなるまで、食器を洗ったり除菌する必要はないのだ。

■命に関わるケースも

 温水洗浄便座にも注意したい。

 空気中や土の中だけでなく、人間の体にも全身に〈常在菌〉と呼ばれる細菌がいる。皮膚にいる常在菌は、皮膚の表面にある脂肪を食べて分解し、皮膚に弱酸性(pH5.4~5.7)の膜を作る。この膜がアレルゲンや病原菌の侵入を阻止したり、水分を保つ働きをしている。

「常在菌は肛門の周りにも存在し、大便に含まれている有害な細菌が侵入しないようにブロックしています。しかし、温水洗浄便座を1日に何度も使ったり、強い水圧で当て続けると、常在菌が洗い流され膜がなくなってしまうのです。その結果、皮膚が中性になって有害な細菌が侵入しやすくなり、強いかゆみに悩まされたり、排便のたびに激しく痛む肛門周囲皮膚炎や、膿がたまる肛門周囲膿瘍になる可能性もある。悪化すると、敗血症を誘発して命に関わるケースもあります」

 内閣府の調査によると、温水洗浄便座の普及率は71.3%に達する。1日1回、人肌程度の温度で10秒ほど洗い流すくらいなら問題ないが、使いすぎは禁物だ。

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