夏こそチャンス 「高血圧の薬」をやめる2つの条件とは

来夏に向けて今から食生活改善
来夏に向けて今から食生活改善(C)日刊ゲンダイ

 暑すぎる今年の夏。早く涼しい季節が来ないかと思っている人もいるだろう。しかし、高血圧の人にとっては、夏は薬と手を切る最大のチャンスだという。東京都健康長寿医療センター高血圧外来の桑島巌顧問に聞いた。

 50代後半のAさんが降圧薬を服用し始めたのは、6年前。当初、Aさんの血圧は160/106(㎜Hg)と、診察室で測定した場合の基準値140/90未満をはるかに超えて高かった。以来、降圧薬1錠を飲み忘れないようにし、定期的な運動、減塩、ストレスを少なくする生活などを心掛け、血圧は徐々に低下。最近は120/80台を維持していた。

 昨夏、桑島医師の「夏の間だけでも薬をやめてみますか?」という提案を受け入れた。「血圧が上がってきたら、薬をまた飲み始めてもらう」とクギを刺されていたので、Aさんは以前にも増して適度な運動と減塩に取り組んだ。結果、今年、降圧薬をやめて2度目の夏を迎えることができた。

「夏は暑さで血管が拡張するので、血圧が下がりやすい。これをきっかけに、薬をやめることは可能です。冬になると血管が収縮して血圧が上がりやすくなるので、“薬をやめられたのは夏の間だけ”となる人も多い。しかし、Aさんのように、薬とキッパリ手を切ることができる人も珍しくありません」

■1週間は“試運転”

 夏に薬をやめるには、「毎朝、自宅で血圧を測定している」「120/80台を、最低でも半年以上キープしている」の2つの条件を満たす必要がある。

「薬を複数錠飲んでいる人は、今の錠数から1錠減らすようにしてください。3錠なら2錠、2錠なら1錠になります。1週間、毎朝血圧測定をし、4日間以上、130/85以上にならなければ、そのまま減らした、あるいはやめたままで構いません。毎朝の血圧測定は継続し、130/85を超えたら、服薬の再開を検討し始めます」

 朝の血圧測定は、起床後すぐに行ってはいけない。

「起床直後は自律神経が切り替わるので、普通の人でも一過性に血圧が上がります。できるだけ起床後30分以上すぎてから、測るのが望ましい」

 残念ながら、先に挙げた条件を満たしていない人は今夏、薬をやめる、減らすことは難しいが、来夏に向けて今から食生活改善に努めるべきだ。

 ちなみに、薬をきちんと服用し、減塩もしているのに血圧が下がらなければ、「高血圧薬が自分の体にあっていない」「ストレスによる高血圧」「手術で治る高血圧」のどれかの可能性がある。

「降圧薬には(1)カルシウム拮抗薬(2)利尿薬のほか、(3)レニンという血管を締め付けるホルモンを抑制する血管拡張薬などがあります。水分で血管が腫れて血圧が上がる“パンパンタイプ”には、(1)か(2)が、血管を締め付けて血圧が上がる“ギューギュータイプ”には(3)が適切な薬です」

 ストレスが強い状態が続けば、それを解消しない限り、血圧はなかなか下がらない。

「さらに、高血圧には、原発性アルドステロンといって、手術で治るものがあります。これは薬では血圧が下がりにくいのです」

 努力なしには薬はやめられない。しかし、“成功”を手に入れられた時の爽快さが、努力の記憶を吹き飛ばしてくれるだろう。

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