気温気圧の変化で起こる「秋の不調」は自律神経を鍛えて防ぐ

涼しくなったのに…
涼しくなったのに…(C)日刊ゲンダイ

“最近、肩や腰が痛い。夏の疲れが出たのかもしれない”──。ようやく酷暑を乗り切ったというのに、秋に体の不調を訴える人は少なくない。実は過ごしやすく感じる秋は、天気がコロコロ変わり、意外に体にストレスがかかる季節でもある。そのせいで、肩こりや腰痛、古傷の痛み、頭痛などの不調を訴える人が増えるという。どうしたらいいのか? サラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「そもそもこの時季に体調が悪くなる理由は2つあります。ひとつは気温の変化による自律神経の乱れです。自律神経は体の機能を調整している神経です。暑いときは末梢血管を拡張して汗を出すことにより、体内の温度を下げます。寒いときは逆に末梢血管を収縮させて熱を体内にとどめることで体温を保ちます。気温の差が大きくなると、それまで気温の変化に対応してきた自律神経が対応しきれなくなり、血液循環が悪くなり、体調不良をもたらすのです」

 血行が悪くなると体中の細胞への酸素や栄養の搬送と老廃物の搬出がうまくいかなくなり、筋肉に疲労物質が蓄積される。ただでさえ気温低下でこわばった肩や腰の筋肉が、さらに硬直。そのことで血管や末梢神経が圧迫され血行不良を増幅し、末梢神経を傷つける。それが痛みなどの体調不良を起こすのだ。

「もうひとつの原因は気圧です。はっきりした理由はわかっていませんが、低気圧にさらされるとヒスタミンの分泌が増えることがわかっています。ヒスタミンは体の外の刺激によって肥満細胞と呼ばれる細胞から分泌され、免疫細胞に指令を出す働きがあります。これが過剰に分泌されると、花粉症のようなアレルギー症状が起きてしまい、炎症作用、血管の収縮、血圧の上昇をもたらします。その結果、不調がひどくなってしまうのです」

■“酔い止め”にも意外な効果が

 むろん、食べ物がおいしい季節だけに食べ過ぎによる胸焼け、胃もたれが不調の原因になる場合もあるが、まず気をつけたいのは天気痛なのだ。

■入浴と運動で自律神経を鍛える

 では、どうすれば、秋の不調を避けることができるのか。

「まず急激な気温の変化にそなえ早めに長袖のシャツを着たり、上着を着用することで、気温に対応できるようにすることです。寝る前に38~40度のぬるめのお風呂に入り、交感神経から副交感神経への移行をスムーズにすることで、自律神経の乱れを整えることもお勧めです。さらには散歩など、適度の運動をすることで交感神経を鍛えましょう。食べ過ぎないよう、先にさゆを飲んでから食事をするのもいいかもしれません」

 意外なことに気圧が下がれば、“酔い止め”を使うのも手だという。

「天気痛を起こす人は耳の奥(内耳)にある気圧を感じる細胞が他の人より敏感だといわれています。通常、内耳はリンパ液で満たされており、体を動かしたときのリンパ液の流れを、脳が察知することで体のバランスをとります。しかし、気圧を感じる細胞が敏感すぎるとちょっとした気圧の変化に大きく反応してしまい、体が傾いていないのに脳は体が動いたと混乱。その結果、からだ全体の交感神経が興奮し、治ったはずの古傷の痛みも感じてしまうのです。ですから、気圧が低くなり、痛みが出てきたと感じたら、酔い止めを飲むと効果があるともいわれています」

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