例年11~1月がピーク 「新型ノロウイルス」ジワリ接近中

ウイルス汚染海域でとれた二枚貝もアブナイ
ウイルス汚染海域でとれた二枚貝もアブナイ(C)日刊ゲンダイ

 我慢できないほどの吐き気と嘔吐、そして激しい下痢が典型症状の“ノロウイルス食中毒”の季節が刻々と迫っている。2006年から翌年にかけての冬には日本で大流行(GⅡ・4の変異株)。奈良や静岡で集団発生が相次ぎ、2万7000人もの患者が発生した。例年、10月を境に発生件数が急増。11月から1月までの3カ月に感染のピークを迎えるだけに、警戒が必要だ。

「今年は“新型ノロウイルス”の流行が懸念されています。新型とはウイルスの構造体を決める遺伝子が突然、別のタイプに変異したもの。かつてノロウイルスにかかって免疫を持っている人でも、新しい変異株には免疫がないため、当然かかりやすいわけです。コレが大流行の心配のタネですが、もうひとつ大きな問題を抱えています。新型ウイルスは遺伝子の変異に伴って感染力が強くなったり、病原性が強くなったりする可能性があるのです。ヒトの腸管細胞に付着しやすくなり、感染力が高まることもある。各方面からこんな警告が出ているのは、外国での発生例などから、こうしたことが予想されるためです」

 こう言うのは、食中毒の専門家で東京家政大学客員教授の藤井建夫氏。

 この新型ノロウイルスは昔からあった「GⅡ・17」の変異株。この株は昨年から川崎など国内でも確認され、今年の夏は“ノロ中毒”が例年よりも増加した事実も気がかり。9月時点でアジア諸国での検出が増加しており、間もなく流行の季節に入る日本で、いつ感染が拡大しても不思議ではない状況だという。

■驚くべき感染力

 厚労省の統計(食中毒の発生状況)によると、昨年(14年)は、全体で976件、患者数は1万9355人だった。このうちノロウイルスは293件、1万506人。発生件数の3分の1、患者数では半数ちょっとを占めた。

 それが、この冬はさらなる猛威を振るう可能性があるとなると、恐ろしい話ではないか。

「ノロウイルスは1件で数百人の患者を出すような、大規模食中毒を起こしやすい。05年以降、患者数500人を超える食中毒は昨年まで31件ありましたが、15件がノロウイルスが原因のもの。1件で2000人を超えた事例もありました。

 また、症状が消えた後も2週間から1カ月くらい、排泄などでウイルスを出す点、ウイルスを持っているのに、下痢症状が出ない不顕性感染者が3分の1ほどいる点も恐ろしい。感染の可能性があるのです。消毒用アルコールの効果が薄いことも事実。体力が弱い子供や年寄りがかかりやすいことも含め、甘く見てはいけません」

 ノロウイルスは糞便1グラムの中に1億個、嘔吐物1グラムの中には100万個ほどいるといわれる。この粒子が「10~100個のごく少量」(藤井氏)体内に入ると感染するという。驚くべき感染力だ。

「感染ルートは、ひとつは感染者が治ったと思って調理場に立ち、手で触れた食品に付着して感染の原因になるケース。仕出し弁当、総菜、サンドイッチ、寿司などです。さらに、人から人へもあり得ます。老人ホームなどで感染者が触れたドアノブや蛇口、雑誌や道具に触ってしまい次々に……とか。子供たちもこのケースが多いはず。嘔吐した患者の口の中にウイルスが残り、くしゃみや咳で相手にうつる可能性だってあるでしょうね」

 感染防止には「外から帰ったら必ず手洗いをする」が基本だが、それだけでは心もとない。我々サラリーマンも冬の間は素手で触れたモノは食べない、かかった人には2~3週間近づかない、通勤電車内は不織布マスクなどでガードする――。このくらいは実行すべきかもしれない。

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