画期的「痛み緩和クリーム」で“注射嫌い”がいなくなる?

小児はもちろん、成人でもOK
小児はもちろん、成人でもOK(C)日刊ゲンダイ

 注射が嫌いな人にとって画期的なクリームが発売された。注射を怖がる小さな子供を持つ親は特に要チェックだ。

「子供の頃に受けた注射の痛みがトラウマになり、白衣が怖い、病院が嫌といった強いイメージができあがる。それが成人になってからも消えず、不調があっても病院に行くのを嫌がり、病気の進行を招くことがあります」

 こう話すのは、JR東京総合病院麻酔科・痛みセンターの花岡一雄医師(名誉院長)だ。痛みは、「痛い」と思えば思うほどより一層強くなる。

「注射をはじめ外因性の『痛み刺激』が感覚器に与えられると、脳へ信号が送られます」

 すると、筋緊張や血管収縮が起こり、局所の血流が乏しくなる。

「組織の酸素が欠乏して発痛物質の生成が促進され、より痛みを感じ、それがまた脳へ送られる。感覚器の痛みはアドレナリンの分泌などにかかわる副腎も刺激し、それが血管収縮につながり発痛物質の生成を促進します」

 血液検査、ワクチン接種、インスリン治療、硬膜外麻酔、神経ブロック、血液透析……注射を受ける機会は数限りなくある。注射の痛みをなんとかできないかと開発されたのが、疼痛緩和クリームだ。

 もともとは2012年、レーザー治療における疼痛緩和のための外用局所麻酔剤として承認を受けた。今回は「注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」として承認され、さらに0歳児を含む小児への用法・用量も追加された。

 アミド型局所麻酔薬であるリドカインとプロピトカインの2つを有効成分として配合している。

「従来のクリームはリドカイン単体で、室温では固体のため皮膚への透過性が低く、麻酔効果も小さかった。今回のクリームは2つを混合することで液状になり、皮膚への透過性が高く、麻酔効果も大きくなりました」

 皮膚は、表皮、真皮、皮下組織、筋層と組織が重なってできている。

 表皮は、皮膚表面から約0.2ミリ、真皮は表面から2.2~3.2ミリ、皮下組織は表面から4.2~5.2ミリの厚さ。注射は種類によって皮膚のどの深さまで到達するかが変わるが、最も深くまで到達する静脈注射でも皮下組織の辺りだ。

■保険適用の範囲内

 疼痛緩和クリームは局所麻酔剤なので、塗ってしばらく時間を置いてから効果を発揮する。塗ってからポリエチレンフィルムなどのフィルム材で密閉して時間を置く。

「麻酔効果を発揮できる深さは、塗ってから60分経過では皮膚表面から平均2.9ミリ、120分経過では平均4.5ミリでした」

 つまり、たいていの注射で痛みの緩和が可能ということ。成人、小児に対し、複数のケースにおいて疼痛緩和がどれほど見られたかの研究が行われている。たとえば、4~10歳の60人を対象に、半分は今回のクリーム、半分は偽薬を塗り、60分置いた時点では、手背への静脈注射時の疼痛緩和は、偽薬と比べて有意に高かった。

「注射時の痛みを和らげるために麻酔注射を打つ場合がありますが、その注射自体が痛い。痛みを緩和するために、別の痛みを感じるというのは本末転倒です。こういった場合にも、今回のクリームは有効です」

 注射や静脈留置針を刺す前に「疼痛緩和クリームを塗ってほしい」と希望すれば、小児はもちろん、成人でもOK。保険適用範囲内である。

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