後悔しない選択は? 医者は「がん治療」をこう選んでいる

2人に1人が発症する時代
2人に1人が発症する時代/(C)日刊ゲンダイ

 がんを告げられた時、どうすれば後悔しない選択ができるのか? 「医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか」などの著書がある東京有明医療大学・川嶋朗教授に聞いた。

「主治医は、自分や家族なら選ばない治療を勧めているのではないか?」 東京女子医大付属青山自然医療研究所クリニック所長を務め、西洋近代医学と代替・伝統医療を統合させた治療を行う川嶋教授のもとには、こんな相談がしばしば寄せられる。そんな時、川嶋教授は必ず「すべての人に等しくベストの治療はない」と伝える。自分にとって「ベストの治療」を受けるために押さえておくべきことは、次の4つだという。

(1)「数字」を聞く

 たとえば、抗がん剤治療を勧められたとする。受けた場合の生存率はどれくらいか? 受けなかった場合は? 「数字」は客観的なデータだ。いたずらに怖がらずにきちんと聞く。

「私の友人である健康増進クリニックの水上治先生は、『西洋医学でも代替医療でもお金が許す限り何でもやる。ただ、抗がん剤だけは拒否したい』と言う。それは、副作用に苦しむ患者さんを目の当たりにしてきたことと、副作用による突然死を避けるためです」

 抗がん剤では、1~2%の人が心不全で突然亡くなっている。この1~2%を非常に低いと考える人もいるだろう。

「しかし水上先生は、心不全で亡くなる患者さんを実際に見てきて、自分が1~2%に入らない自信はない。身辺整理もできず、会いたい人にも会えず、突然死を迎えたくないというのが希望だそうです」

 客観的なデータを、自分の人生観と照らし合わせて判断する。抗がん剤治療の深刻な副作用と生存率をはかりにかけた時、どちらに傾くかは、人それぞれだ。

(2)すぐ結論を出さない

 セカンドオピニオン、サードオピニオン……と納得のいくところまで意見を求める。川嶋教授の知人の医師には、咽頭がんの治療法について37人の医師に意見を聞いた人もいるそうだ。

「医師は基本的にガイドラインに沿った治療法を提案します。『効果があまり期待できない』『自分なら拒否したい』と思っていても、ガイドラインに定められている治療を行っていれば、何か問題が起こっても責任を問われず、訴えられもしないからです」

 医療の素人である患者では、1人の医師に聞いただけではその本心を見抜けない。しかし、複数の医師に意見を求めれば、違う話が出てくる可能性が高い。日本のがん治療は外科医が中心だが、外科医だけに意見を求めても同じような答えになる傾向がある。放射線治療医や腫瘍内科医といった“外科医以外”にも意見を求めるべきだ。

(3)続けられるか?

 がんは保険がきかない治療も多いが、高額で続けられないものには手を出してはいけない。

「また、代替・伝統療法は西洋近代医学とうまく組み合わせてこそ価値があるのですが、代替・伝統医療だけで『絶対に治る』とうたったり、ほかの治療法を否定するうさんくさい医師も残念ながらいる。注意が必要です」

(4)経験者の話をうのみにしない

「『○○さんはこれでがんが治ったから』と信じ込み、○○さんが受けたがん治療を無条件で支持する患者さんも少なくありません。しかし、それが自分に合った治療法とは限りません」

 “勉強不足”の患者も多いと、川嶋教授は指摘する。自分の治療を選べるのは自分しかいない。肝に銘じるべきだ。

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