全がん協の調査で判明 がんの「5年生存説」はウソだった

5年生存説は“気休め”だった?
5年生存説は“気休め”だった?(C)日刊ゲンダイ

 がんの「5年生存説」はマヤカシ――。こんな研究結果が発表された。全国32カ所のがん専門病院でつくる「全国がん(成人病)センター協議会」が、がん患者を追跡調査して10年後の生存率を集計したのだ。

 それによると、がんの種類によって5年後と10年後の生存率に違いがあることが分かる。比較的安心できるのは胃がんと大腸がんで、前者は5年後の生存率が70.9%、10年後が69%。後者は5年後が72.1%、10年後が69.8%と70%前後でほぼ横ばい。手術後10年経っても死亡する確率が低いわけだ。

 問題は肝がんと乳がん、肺がんだ。肝がんは5年後の生存率32.2%が10年後には15.3%と半分以下に激減。乳がんは88.7%→80.4%、肺がんは39.5%→33.2%と生存率がぐっと低くなる。

 よく、がん手術を受けた人が「あと半年で手術から5年。それまでに再発しなければ完治したことになる」と期待の発言をすることがある。これが「5年生存説」だ。

 だが実際は、肝がんなどは5年間以上健康を保っても再発して死に至る可能性がある。この研究を担当した群馬県立がんセンター前院長の猿木信裕氏は「乳がんの患者さんなどが治療後5年経っても治療を続けているため10年間のデータが必要と判断し、集計しました」と説明する。

 医学博士の米山公啓氏が言う。

「5年生存説は医者が患者に言った“気休め”が独り歩きし、都市伝説みたいに語り継がれたのでしょう。医学的な根拠は希薄です。がん手術から5年以上経っても、実は完全にがんが取り切れていなかったとか、遺伝的な体質でまた同じ部位にがんが発生するといった再発の心配はつきもの。5年後以降も年に数回、MRIや超音波検査、血液の腫瘍マーカーなどを受けてください。中でも他の部位への転移が心配な人には腫瘍マーカーをおすすめします」

 ちなみに、米山氏によると、オプジーボという画期的な薬が開発されたという。

「従来の抗がん剤はがんを直接壊しますが、オプジーボは免疫力を高めてがんを壊す仕組み。すでに米国で使われ、目覚ましい成果を上げています。日本でもあと4、5年で使えるようになるはずだから、それまでは再発に注意して過ごしてください」

 がんと一生戦う覚悟が必要だ。

関連記事