欧州で大ヒット中 “かざすだけ”新型血糖測定器の実力

「痛い、時間がかかる、面倒くさい」からオサラバ
「痛い、時間がかかる、面倒くさい」からオサラバ(C)日刊ゲンダイ

 血糖値が安定せず、頻繁に自己測定しなければならない糖尿病患者に朗報だ。これまで自己血糖測定は「痛い」「時間がかかる」「面倒くさい」が当たり前だった。指先などを針で刺し、血を絞り出して行うからだ。ところが、欧州では体に張り付けたセンサーにレシーバーをかざすだけでいつでも自己血糖を測定できる装置が登場。専門家の間で「糖尿病治療を変える」と話題になっているという。

 昨年夏、3年ぶりに欧州を訪ねた加藤秀樹さん(仮名、48歳)はイギリス人の友人の表情が明るくなっているのに気がついた。重い糖尿病に苦しんでいた友人は食事が終わるたびにトイレに立ち、自己血糖値を測っていた。

 ところが今回、食後の会話を中断することなく、加藤さんの前に座り続けたのだ。加藤さんが「血糖を測らなくて大丈夫なのか?」と尋ねたところ、「平気、平気」と言いながら右腕の袖をまくりあげ、上腕部に装着された500円玉大のセンサーを見せてくれた。それが「フリースタイルリブレ」(アボット社)だった。

■欧州では生産追いつかず

「そのセンサーをつけている2週間は、服の上からでも専用の読み取り器を近づけるだけでそのときの血糖値はもちろん、それまでの8時間の血糖値を平均5分ごとに読み取ることができるそうです。彼は、“8時間ごとにスキャンすれば24時間の自己血糖値を測れる。血糖測定の苦しみ、面倒くささから解放されたうえ、血糖値が乱れたときにすぐに薬で対処できるので、より安全になった”と大喜びでした」(加藤氏)

 欧州では2年前に発売され、生産が追いつかないほど人気になっているという。糖尿病専門医で「しんクリニック」(東京・蒲田)の辛浩基院長が言う。

「欧州での発売以降、日本の糖尿病専門医の間で話題になっているデバイスです。食事や運動で血糖値がどう変化するのか手軽にわかる。また、寝ている間に低血糖になっているかどうかも気付かせてくれる。身内がスキャンすることで、子供や認知症の人の血糖値を調べることもできる。糖尿病治療を変える画期的デバイスになるのではないか」

 しかも、この装置ではスキャン時点の血糖値が上昇トレンドにあるのか、下降トレンドにあるのかも表示してくれるという。これなら、大きな血糖値の乱れを予測して、薬を調節するなどの手を打つことができる。

 お風呂や水泳をするときでもセンサーを取り外す必要はない。センサーは5ミリくらいのフィラメントが1本突き出ていて、それを上腕部に刺すだけ。痛みはほぼ感じないというから驚きだ。

 しかも、欧州では読み取り器とセンサーセットで2万円前後で発売されているという。

 皮膚が弱い人などはセンサー装着箇所がかぶれるなどの“副作用”はあるものの、利便性が大きく上回る。

 実際、2年前に英国から個人輸入して使用しているという眼科医が言う。

「血糖値が跳ね上がるパターンがわかるので、投薬がより適正化され、インスリンなどの薬の量が減った、という患者さんもいます。日本での早期導入を望む糖尿病患者さんは少なくありません」

 厚生労働省の「患者調査」によると、日本の糖尿病患者数は316万6000人。日本での発売は未定だ。

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