作家急死で物議 「糖質制限ダイエット」に向かない人とは

肉ばかり食べてると…
肉ばかり食べてると…(C)日刊ゲンダイ

 糖質を控えれば、体重がみるみる落ちると話題の糖質制限ダイエットを巡って、ショッキングなニュースが飛び込んできた。糖質制限ダイエットのスポークスマン的なノンフィクション作家・桐山秀樹氏が今月6日、心不全で亡くなっていたのだ。享年61。宿泊先の都内のホテルから仕事に向かうため、身支度を整えたところ、倒れて急死したとみられている。

 女房や上司に「太っていると出世しない」などと注意され、糖質をカットし始めたサラリーマンは気が気じゃないだろう。

「正月には、『今年も糖質制限バンバンやるから応援してね』と連絡がありました。この先も、仕事のスケジュールはいっぱいだったようで、突然の訃報に言葉がありません」(出版関係者)

 桐山氏は2010年、糖質制限ダイエットで、87キロあった体重を67キロに落としたほか、糖尿病も劇的に改善。同じく糖尿病を患う仲間とともにダイエット活動をつづった「おやじダイエット部」はベストセラーに。そんな活動ぶりから、糖質制限ダイエットのスポークスマン的存在なのだが、この悲報を聞くと、やり方によって糖質制限は危ないのかと思えるのだ。

 日本糖尿病学会評議員で、「加藤内科クリニック」院長の加藤光敏氏は「桐山さんの直接的な死因が過剰な糖質制限とは思えない」とした上でこう言う。

「3大栄養素はタンパク質、脂質、糖質ですが、過剰に糖質を制限すると、概して脂質に偏りやすい。特に動物性脂肪の過剰摂取は、悪玉のLDLコレステロールを上昇させ、動脈硬化につながります。糖質制限する場合でも、毎日糖質を150グラム以上取るなど、無理しないことが重要です」

■酒好きのサラリーマンこそ要注意

 桐山氏が6年前に減量したキッカケは、糖尿病の発覚だった。過去2カ月の平均的な血糖状態を示すHbA1cは9・4%と、正常の5・8以下を大きく上回っていた。血圧は200/100と高く、糖尿病と高血圧は以前から少しずつ進行していたことがうかがえる。案の定、それに伴う動脈硬化による心肥大も同時に指摘されたそうで、当時、息苦しさを訴えていたのもそのためだろう。

 それで、改心した。

「桐山さんは深夜の執筆中に揚げ物やパスタなど高カロリーな糖質を食べることも多かったようですが、ダイエットを機に糖質は一切やめたと聞いています」(前出の関係者)

 その後の劇的なダイエットが糖質制限だった。糖質を極力控える代わりに、主食として取り入れたのは豆腐、チーズ、肉、魚。酒は焼酎とウイスキーを飲む。その結果が冒頭の減量成果で、診断時に215㎎/dlだった血糖値(正常値は109以下)はわずか3カ月で93に低下したという。

「おかずをたくさん食べて、お酒も飲んで、しかも痩せられる」というのが糖質制限ダイエットの触れ込みだから、酒好きほど“愛好者”になりやすい。そこに落とし穴がある。桐山氏のように糖尿病の人は、要注意だ。

「糖尿病の人が飲酒をすると、一時的に血糖値が下がり、低血糖になりやすい。服用している薬の種類によっては、薬そのものに低血糖のリスクがあるのでなおさらです。糖尿病の人にとって低血糖は、危険を伴うことがあります。飲酒の間には、茶碗に半分くらいの糖質を取った方がいいのです」(前出の加藤氏)

 健診でのイエローカードをキッカケに、食生活を改める人は少なくないだろう。だが、糖質制限ダイエットは、やり方によっては心筋梗塞や脳梗塞が増えるという報告もある。食事改善を始めるなら、医師に相談することだ。

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