40歳以上のドライバー要注意 緑内障に“無自覚”のリスク

緑内障は視野が狭くなり、交通事故を起こしやすい
緑内障は視野が狭くなり、交通事故を起こしやすい(C)日刊ゲンダイ

 毎年、10月から12月にかけて交通事故の発生件数、死亡者数はともに増えてくる。日が短くなり、交通事故の発生が多い夜の時間が長くなるからだ。これに拍車をかけるのがドライバーの持病だ。意識障害を伴う「てんかん」や「睡眠障害」「統合失調症」「無自覚性の低血糖」「認知症」などを例として、免許取得や更新時に「病気等に関する質問票」への回答が義務付けられている。問題は交通事故を引き起こしやすい病気でありながら、自覚しづらい「緑内障」だ。

 佐藤邦夫さん(仮名・58歳)は昨年10月、車で帰宅中に接触事故を起こした。左側のガードレールに気づかず車体を傷つけた。実は、9月にも2回、同じ箇所を傷つける自損事故を起こしていた。

「損害保険の代理店さんと事故の話をしていたところ、“佐藤さん、ひょっとして目が悪いんじゃないですか?”と言われ、眼科医院で診てもらったのです。そうしたら、自覚していなかった緑内障が見つかりました」(佐藤さん)

 視野が狭くなり最悪失明する緑内障は、交通事故を起こしやすいことが知られている。東北大学病院の国松志保講師が行った自動車の運転シミュレーターを使った実験では、症状が進んだ緑内障の人は正常な人に比べて事故が3倍多いことが報告されている。清澤眼科医院(東京・南砂)の清澤源弘院長が言う。

「視野の下方が欠けていれば左右の飛び出しを見落としやすく、上方が欠けていれば信号を見落としやすくなると言われています」

■定期的に眼底検査や視野検査を

 問題は緑内障を患っている人の多くが、自身の視野の異常に気づいていないことだ。

「40歳以上では20人に1人が緑内障といわれていますが、多くの人が無自覚で治療していません。健康診断では視力や眼圧、眼底検査が主で、視野検査はほとんど行われていないからです」(清澤院長)

 かつて東京慈恵会医大の眼科教室が通常の健康診断に視野検査を追加したところ、約1万5000人の受診者のうち、健康診断では見逃されてきた緑内障患者が167人いたと報告している。

「患者さんが緑内障を自覚しない理由のひとつに緑内障のイメージが誤って伝わっていることが挙げられます。新聞や雑誌の記事では緑内障になると、視野が欠けた部分が真っ黒になるイメージの写真が掲載されます。しかし、実際はフィールドインといって、見えなくなったところは周りの情報で埋めてしまって、違和感を感じないのです」(清澤院長)

 例えば、道路の右の端っこに停車中の車と複数の子供がいたとしよう。目の右側の下が欠損した場合は、停車中の車と子供たちがいないだけで、道路や背景の草むらが続いているように見えるというのだ。現在、メガネやコンタクトレンズなどでの矯正視力が両目で0.7以上あればまず普通運転免許を取り上げられることはない。緑内障でも安全運転している人も多い。だからといって緑内障と気づかないまま運転するのはリスクがある。では、どうしたらいいのか?

「緑内障を早期発見することです。それには健康診断や人間ドックの眼科検診で“視神経乳頭陥凹”を指摘され、“要精密検査”と言われた人は眼科で視野検査を受けましょう。時々、“毎年指摘されるが、とくに困ったことは起きていないので大丈夫”などとうそぶく人がいますが危険です」(清澤院長)

 視神経乳頭は、網膜に映った光の信号を束ねて脳に送る視神経のつなぎ目のこと。その中心のへこみが視神経乳頭陥凹で、大きくなると緑内障になりやすい。

「網膜剥離」「網膜色素変性症」「網膜動脈閉塞症」「脳梗塞」「脳腫瘍」など、緑内障と同じで「視力は出るのに視野が狭くなる病気」は他にもある。

 40歳を過ぎてハンドルを握る人は、定期的に眼底検査や視野検査を受けるべきだ。

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