3月は危ない条件が 春先のメンタル不調は“変化”を減らす

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 冬から春に季節が変わり始め、気候が不安定になる時期は「木の芽時」と呼ばれる。そんな植物が新しい芽を吹く頃は、メンタル不調を招きやすいといわれている。うつ症状が悪化するという人もいる。春先は危ない。

 三寒四温といわれるように、この時期は寒暖差が激しく、気候がコロコロと変わる。日替わりどころか、一日のうちに気温差が10度近くあることも珍しくない。そうした急激な気候の変化に対応するため、恒温動物である人間は自律神経がフル回転する。体温や血圧を一定に保とうとして、交感神経と副交感神経を頻繁に切り替える。その分、自律神経の負担が大きくなり、メンタル不調を招いてしまうのだ。

 こうした気候の急激な変化に加え、春先は身の回りでたくさんの変化に見舞われる。約20社の企業の嘱託産業医として、ビジネスマンのメンタル相談に乗っている奥田弘美氏(精神科医)が言う。

「人間は『変化』に大きなストレスを受けます。日本は一般的に4月が新年度のスタートなので、3月、4月は、変化だらけといっていいでしょう。卒業、入学、就職、異動、引っ越しなど、生活環境がガラリと変わる機会が多い。自分自身に動きがなくても、上司がかわる、部下がかわる、同僚がかわるだけでも職場の雰囲気は一変しますし、新たな緊張感が生まれます。頻繁に一緒に飲みに行ってはグチをこぼし合っていたような親しい同僚が異動で転勤になり、ストレス解消の手段を失ってしまうケースもあります。変化だらけのこの時期は、それだけ大きなストレスを受ける季節なのです」

■“新しいこと”を始めてはいけない

 また、春先は歓送迎会が多くなるなどして生活が不規則になり、寝不足に陥る人も少なくない。さらに、年度末だからと必死に仕事をこなす人も多く、それだけ疲労が蓄積されていく。

「気候の変化による自律神経の負担、生活環境の変化によるストレスに、身体的な疲労が加わると、さらにメンタル不調を招きやすい条件が揃ってしまいます」

 春先の精神的な不調を回避するには、ただでさえ多い「変化」を、それ以上は増やさないことが基本的な対策になる。

 転勤や異動など、自分ではどうにもならない変化は避けられないので、自分の心がけでなんとかなる変化を減らしていけばいい。

「たとえば、お彼岸に帰省するのを避けたり、体力消耗が激しいマラソンやゴルフなどの趣味を控えるのもいいでしょう。精神的にも身体的にも疲れているのに、普段と同じように活発に動いてしまうと、メンタル不調を招きやすくなってしまいます。変化だらけの春先は、心も体も疲れているんだということを意識して、プライベートを休息モードにすることを心がけてください」

 また、春になるからといって“新しいこと”を始めようとしてはいけない。年度の「区切り」となる春先は、英会話などの習い事を始めたり、禁煙やダイエットに取り組むなど、心機一転、何かをスタートさせようという人が少なくない。

「しかし、新しいことを始めるのは、それ自体が緊張感を生んだり、ストレスになります。習い事を始めて時間に追われると、体力もそがれてしまいます。変化が多い時期に始めるのは避けた方がいいでしょう」

 睡眠と食事をしっかり考えることも重要だ。メンタルに不調を来す場合、きちんと睡眠が取れていない人から崩れていくという。週2日は、自分の仕事が終わったら早く帰宅して、最低6時間の睡眠時間は確保したい。

「食事は忙しい時ほどタンパク質とビタミン類をバランスよく摂取することを心がけてください。1日3食のうち2食だけでもいいから、野菜、肉、魚などをバランスよく食べる。疲労回復度が変わってきます」

 よく「五月病」といわれるように、メンタル不調を訴える患者は4月の終わりから5月にかけて増えるという。変化が一段落して、ホッとするタイミングで症状が表れるのだ。3月、4月は、その“土台”が築かれる時期といえる。しっかり対策しておいたほうがいい。

関連記事