寿命に影響の恐れも 「便秘」を的確に治す5つのポイント

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「たかが便秘なんて」と軽く考えていないだろうか? 近年、便秘が寿命に影響を与えるとの研究結果が報告されている。しかし、間違った対策はまだまだ多く、非専門医がその“蔓延”に一役買っている可能性もある。

 便秘を改善するには何を知っておくべきか? 便秘に悩む患者が全国から集まる「指扇病院」(さいたま市)の副院長で、排便機能センター長を務める味村俊樹医師に話を聞いた。

①すべての便秘に食物繊維が効くわけではない

「便秘には食物繊維」は“常識”のようになっているが……。

「食物繊維不足が原因の便秘であれば、必要量の摂取が大切です。しかし、食物繊維以外が原因の便秘は、摂取しても改善はほぼ見られません」

 これを示す興味深い研究結果がある。便秘患者147人を原因ごとにグループ分けし、食物繊維を投与したところ、食物繊維の摂取量が少ないグループは、便秘の治癒率が70%超と高かった。

 一方、食物繊維の摂取量には問題ないが、大腸の蠕動運動が少なく排便回数が減少しているグループでは治癒率0%、直腸や肛門の機能や構造に異常があるグループでは治癒率4%だった。

②下剤は毎日服用

 食物繊維が効かない便秘にはどういう対策が有効か? その前に、まずは原因ごとの便秘のタイプを押さえたい。

 便秘は「排便回数減少型」と「排便困難型」に分かれる。前者の排便回数減少型には、「食物繊維の摂取量が少ない」タイプと「蠕動運動の回数が少ない、あるいは弱い」タイプがある。

 後者の排便困難型にも、「便が硬い」タイプと「肛門や直腸の機能・構造に異常がある」タイプがある。つまり、便秘とひとくくりで捉えがちだが4タイプあり、それぞれに応じた対策が求められるのだ。

 食物繊維の摂取量が少ないタイプには「食物繊維」が有効。肛門や直腸の機能・構造に異常があるタイプは「機能・構造異常をクリアする対策」(④参照)が効果的。この2つを除いたタイプには「非刺激性下剤」が役立つ。酸化マグネシウムなどがあり、毎日服用する。

③「下剤=悪」は間違い

 下剤には刺激性下剤と非刺激性下剤がある。非刺激性下剤は大腸を刺激せず、便が出やすい環境をつくるもので、自然な排便が得られる。

「下剤=悪」と思っている人は、使い方を間違えている。

「普段は下剤を極力使わないようにし、週末などに刺激性下剤でたまった便を出すのが下剤の典型的な悪い使い方です。最初の便は硬くて出しづらい。しかし刺激性下剤で蠕動運動が活発化しているため何度も排便があり、途中から下痢便、水様便となり、トイレに間に合わないこともある」

 非刺激性下剤を毎日服用していれば、こうはならない。便が軟らかくなり、体に備わる自然な蠕動運動で排便する。

「私が刺激性下剤を使うのは、レスキューとして必要な時のみ。基本は非刺激性下剤だけでコントロールします」

 なお、市販薬は刺激性下剤が多いため、服用時は確認を。

④難治例に「バイオフィードバック療法」

 機能・構造異常の最も多い原因が、いきんだ時に骨盤底筋がうまく緩まず、逆に締めてしまう骨盤底筋協調運動障害だ。この場合、肛門筋電計やバルーンを用いて肛門の弛緩状態を身に付ける「バイオフィードバック療法」がある。

「便を出やすくする前傾姿勢や有効な腹圧上昇法も同時に指導し、成功率は約70%です」

⑤タイプを知ることが便秘治療の第一歩

 便秘がなかなか良くならない人は、便秘治療を積極的に行う医療機関で、②で述べたタイプを知るべき。見当違いの対策を講じているかもしれないからだ。

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