数字が語る医療の真実

卵も脂の多い肉も そればかり食べなければ毎日でもOK

体内合成されるので食事は気にしなくていい
体内合成されるので食事は気にしなくていい(C)日刊ゲンダイ

「コレステロールの数値が高い」といわれると、まず「食事に気を付けなくては」と思われるかもしれません。しかし、実はコレステロールの値と食事の関係ははっきりしません。

 食事から摂取されるコレステロールは、個人差はあるものの、体内で作られるコレステロールの3分の1~7分の1といわれています。

 さらに体内で作られるコレステロールは、食事中のコレステロールの量が減ると多くなり、増えると少なくなるように調整されています。そのため、食事中のコレステロールの量にかかわらず、一定のコレステロール値が保たれるように調整されているのです。

■体内合成されるので食事は気にしなくていい

 つまり、懸命にコレステロールを減らす食事療法をすると、体内でのコレステロール合成が活発になり、結果としてコレステロールはそれほど下がらないということです。

 事実、コレステロールを多く含む卵の摂取と血液のコレステロール値や心筋梗塞にはほとんど関連がないことが、欧米だけでなく日本人の研究でも示されています。1990年の日本人を対象にした循環器疾患基礎調査のデータでは、卵をごくまれにしか食べない女性よりも2個以上食べる女性の方がわずかにコレステロール値の低いことが示されています。

 そうした研究結果を踏まえて、厚労省から出された「日本人の食事摂取基準(2015年版)」には、コレステロールの摂取制限の基準が示されず、話題となりました。「基準が示されていない」というだけで、「やはり取りすぎは問題」という面もありますが、逆に厳しく食事に気を付けてもコレステロールが下がらず、心筋梗塞も予防できず、大変なだけだという面もあります。

 卵も脂の多い肉も、そればかりを食べるということでなければ、毎日食べてもいいのです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。