放置は危険 その顔の火照りは糖尿病のサインかもしれない

原因は風邪だけとは限らない
原因は風邪だけとは限らない(C)日刊ゲンダイ

「何だか、顔が赤いな、大丈夫か?」――。そう指摘されたことはないだろうか? 運動をしたわけでも、日焼けをしたわけでもない。別に緊張もしていない。まして風邪をひいた自覚もない。それなのに顔が火照る。そんなあなたは、糖尿病に体をむしばまれているかもしれない。

■高血糖で自律神経が障害されて顔が火照る場合も

「顔や体が火照る病気は風邪やインフルエンザのほか、高血圧症、バセドー病、更年期障害などさまざまですが、糖尿病でも起こる可能性があります」

 こう言うのは糖尿病専門医で「AGE牧田クリニック」(東京・銀座)の牧田善二院長だ。糖尿病による神経障害は腎症、網膜症と並ぶ糖尿病3大合併症のひとつ。一般的には手足のしびれや痛み、味覚や感覚の鈍化などが知られているが、これは感覚神経や運動神経が侵された場合。血圧、心拍、消化、呼吸などを支配する自律神経がダメージを受けると、「発汗異常」「下痢や便秘」「立ちくらみ」「火照り」として表れる。

「体の火照りは、皮膚の下の毛細血管が拡張することで起きます。糖尿病による神経障害の表れ方は人によって違いますが、高血糖で自律神経が障害され、顔が火照る場合もあるのです」

 そもそも血糖値が高くなるとなぜ、神経障害が起きるのか?

「インスリンの分泌不足や機能低下によって高血糖の状態が続くと、神経細胞の中にソルビトールと呼ばれる物質が蓄積され、神経がダメージを受けるからです。高血糖により細小血管の血流が悪くなり、神経細胞に必要な栄養や酸素が送れなくなることも、神経障害が進む原因です」

 腎症や網膜症は、糖尿病を発症して数年から10年近く経過しないと表れにくいのに対して、神経障害はごく初期のうちに表れる。つまり、神経障害に気付くか否かが、糖尿病を進行させないための最大の予防策なのだ。

「神経障害はごく初期の段階なら、血糖を厳格にコントロールするだけで健康な状態に戻すことも可能です。改善に数年かかることもありますが、希望はあります。その意味では、いかに早い時期に神経障害に気が付くかは大変重要なのです」

■放っておくと突然死も

 とはいえ、顔の火照りは、自分でも気付いていない緊張感や興奮によるものかもしれない。神経障害があるか否かを判断するためには、どうしたらいいのか?

「膝下を叩く『アキレス腱反射検査』が有名ですが、初期の自律神経障害では分かりづらい。お勧めは神経内科などで行われている、末梢神経による刺激の伝わる速度を調べる『末梢神経伝導速度検査』です。手や足先に電極を貼りつけて、それより上部に置いたもうひとつの電極から微弱な電流を流す検査です」

 また、自律神経の働きを調べるために、呼吸心拍変動係数を調べる検査もある。これは安静時と深呼吸をした時の心電図を比較し、脈拍に変動があるかを調べる。

「正常な人は深呼吸をした時に脈拍の変動が大きくなりますが、自律神経障害が起きていると、変動が小さくなります」

 高血糖による神経障害を放置すると、神経そのものがまひして「痛い」「熱い」という感覚が失われ、潰瘍や壊疽を進行させる。場合によっては壊疽ができた足の切断を余儀なくされる。

「心臓の神経が障害されると、心筋梗塞や狭心症が起きても胸痛を感じない無痛性心筋虚血を起こし、死に直結する大きな発作を起こすことも少なくありません。また、低血糖になっても体がそれに反応せず、血糖値を上げるホルモンが分泌されず、冷や汗、手足の震え、動悸などが起きて、意識を失う無自覚性低血糖が起きて、大きな事故を起こす人もいます」

 ただでさえ、梅雨は神経にストレスがかかる時季。血糖値が高めの人が、やたらと顔や体が火照ったうえに、手足のしびれや痛みなどの異変を感じることがあったら、病院に相談した方がいいかもしれない。

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