海軍軍医・高木兼寛が犬で実験を行った3年後の明治22年、西暦でいえば1889年、かっけ研究のためにインドネシアに派遣されたオランダの衛生学者・エイクマンが、新たな発見をします。
玄米に替えて白米で育てられているニワトリで、足がふらつき、そのうち歩けなくなり、さらには呼吸困難で死ぬという人間のかっけに似た病気が発症する事実をつかむのです。
そこでエイクマンはニワトリでの実験を行います。まずニワトリに20~30日間白米を食べさせ、すべてのニワトリでかっけに似た病気を発症することを再度確認します。その後、玄米に替えるグループ、白米と米ぬかを与えるグループに分けて観察したところ、どちらのグループでもすべてのニワトリでかっけに似た症状が消えたのです。
何羽のニワトリで行われた研究かは調べきれませんでしたが、すべてのニワトリでの発症が、玄米、米ぬかですべて回復、「発症ゼロ」になるという結果です。2群に分けた臨床試験でないとはいえ、決定的な証拠です。高木の犬の実験の5年後のことです。
エイクマンは当時、以下のような仮説を立てます。「かっけは白米に含まれる物質による中毒で、玄米や米ぬかにその中毒を解毒する作用があるのではないか」というのです。
ここで、高木の「タンパク質不足説」は否定されたといっていいでしょう。
しかし、このエイクマンの仮説も今の時点から見れば間違いで、まだ正解には至っていません。かっけの原因の解明と治療の普及にはまだまだ時間がかかるのです。
数字が語る医療の真実