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AGEに着目し「糖尿病腎症」を治す画期的な自由診療を行う

エージーイー牧田クリニックの牧田善二院長
エージーイー牧田クリニックの牧田善二院長/(提供写真)
エージーイー牧田クリニック(東京・銀座)牧田善二院長

 糖尿病の合併症の中で最も怖いのが「糖尿病腎症」。最悪の場合、人工透析が必要になる。牧田善二院長(顔写真)は、体内にできる「AGE(終末糖化産物)」という物質に着目し、糖尿病腎症を治す画期的な治療(自由診療)を行っている。

 AGEとは、何なのか。

「AGEは血中のブドウ糖が、タンパク質と結合して作られる物質です。高血糖が長く続くとAGEが体の血管に蓄積し、免疫細胞の攻撃によって常に炎症が起きている状態になる。それが糖尿病によって引き起こされる腎症、網膜症、神経障害、動脈硬化などの原因なのです」

 牧田院長は30年以上にわたりAGEの研究を続けているが、残念ながらAGE自体を除去する薬は見つかっていない。しかし、AGEによって起きる腎臓への害(炎症)を抑える効果がある薬剤が発見されたことで、初期の腎症は確実に治すことができるようになったという。

「糖尿病腎症の特効薬は複数発見されていますが、中でも強力なのが『テルミサルタン』という降圧剤です。欧米では2005年ころから画期的作用があるという研究報告がいくつかありましたが、08年には国内6つの大学病院が中心になって実施した臨床研究で日本人に対しても効果が確認されています」

 ただし、テルミサルタンは、長く使い続けて耐性ができると、効果が低減する弱点がある。その場合には、昔からある「スピロノラクトン」という降圧剤を併用すると、耐性が取れて効果が復活する。

■「尿アルブミンが『2500以下』なら全員治せる自信

 この2剤を使った組み合わせは、糖尿病腎症の治療を考える上で最強の治療法という。

「糖尿病腎症を治すには、とにかく早く発症を見つけて、早く治療を開始することが重要です。そのためには『尿アルブミン』という検査が欠かせません。しかし、糖尿病患者さんの4人に1人しか調べていないのが現状です。腎機能の検査には血中のクレアチニン濃度を測定する『血清クレアチニン』もありますが、この検査は腎機能が50%以下に低下しないと数値に変化が表れないので手遅れになってしまいます」

 尿アルブミンは、血糖コントロールが非常に悪くても正常値の「18」を超えるのに最短でも5年はかかる。値が「10」を超えたら3カ月ごとに検査をすることで、正常値を超えても早期発見できるという。

 尿アルブミン値が「300」以上になると、将来的に人工透析が必要とされる。ところが牧田院長が行う治療では、たとえば「2071」あった尿アルブミン値が1年の治療で「28.9」に、「5564」あった症例でも5年の治療で「36」へと劇的に改善している。

 この独自の治療が行えるのは、長年の研究でAGEに精通し、その関連する海外論文を常に熟読しているからだ。

「いま月1000人くらいの患者さんを診ていますが、尿アルブミンが『2500以下』の糖尿病腎症であれば全員治せる自信があります。また、『300』くらいなら健康保険内で使える薬で治せる可能性もあります」

▽北海道出身。1979年北海道大学医学部卒。米国ロックフェラー大学研究員や米国ピコワー医学研究所主任研究員として5年間勤務。北海道大学医学部講師、久留米大学医学部糖尿病合併症学教授を経て、2003年開院。〈所属学会〉日本糖尿病学会など。

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