VIPと病院の怪しい舞台裏

田中角栄は東京逓信 著名人たちはどんな病院を好んだのか

田中角栄元首と大平正芳元首相
田中角栄元首と大平正芳元首相(C)日刊ゲンダイ

 ずいぶん前になるが、著名人がかかることで有名な個人病院が都心にあった。個室や特別個室があり、患者のプライバシーも守られる。芸能人やスポーツ選手だけでなく、政治家、財界人まで、こぞってこの病院を訪れた。

 ところが、重病の患者が亡くなったり転院したりするケースも目立つようになり、「あの病院に行くと死ぬ」とウワサされ始め、いつしか有名人が列をなすこともなくなった。

 キーボードをたたくだけで気になる病院の情報を収集できるようになる前の話である。

「昔は政治家にとって病気はタブーで、入院したという話が漏れるだけで致命的なダメージを受けました。雲隠れしたり内緒で治療したりできるかかりつけは重要で、何かと融通が利く個人病院が重宝されたのです。国会議員をやっていれば、知り合いの医者なんてすぐにできますからね。ただし最近は、だれでも情報を取れるようになり、がんでも治るケースが増え、病気を公表するようになった。隠すより治すことが優先され、施設の整った大病院で治療するケースが増えていますね」(政治評論家・有馬晴海氏)

 国会議員は、役所が関係する病院を好む傾向もある。脳梗塞で倒れた田中角栄は、旧逓信省の職域病院だった東京逓信病院(千代田区)に運び込まれた。いかにも郵政族のドンらしい選択である。

■スポーツ分野での“老舗”は

 大平正芳が亡くなった虎の門病院(港区)は、国家公務員共済組合連合会の病院だ。「ある議員は、衆議院別館にある診療所で胆石と診断され、虎の門病院を紹介された」(事情通)という。

 厚労省所管の国立研究開発法人である国立国際医療研究センター病院(新宿区)で検査を受ける議員もいる。もともと軍医の病院で、現在は陸軍戸山学校の跡地にあるが、最先端の医療を受けられると評判だ。

 スポーツの分野では、慈恵医大の付属病院(港区)が“老舗”になる。

「川上(哲治)さんが懇意にしていた名医がいた関係で、巨人のチームドクターもやっていましたね。そのため、引退後も慈恵に通うOBは多く、青田(昇)さんも肺がんの治療を受けていました。その後、長嶋監督のときに日大病院(千代田区)になり、今は慶応病院(新宿区)になっています。東京ドームで開催されるホームゲームでは、慶応病院の医師が詰めていますよ」(球界関係者)

 サッカー協会も慈恵と関係が深く、Jリーグの医学委員や日本代表に医師として帯同したりする。他院に先駆けてスポーツ障害を診察してきた関東労災病院(川崎市)や横浜労災病院(横浜市)も、プロスポーツ選手にとってはなじみの病院である。

 昔は、わけのわからない整体師やマッサージ師に入れ込む選手も多かったが、さすがに最近は減ったそうだ。「ヒジならこの人」「ヒザならあの人」と、ちゃんとした専門医にかかるようになった。非科学的な治療が入り込む余地はなくなっている。

 もっとも今も昔もスポーツ選手にはやんちゃなタイプが多く、「トラブルを処理してくれるような医者に対するニーズはあります。こっそりと遊び相手との間にできた子供の中絶を頼む不届き者もいますからね」(スポーツ界関係者)。こればかりは一般患者も通う大病院には頼みにくいだろう。

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