末期がんからの生還者たち

肺がん<3>「主人は“なぜだ!”と叫び、憤慨していました」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京・荒川区内の総合病院で「肺がん・ステージⅢa」の告知を受けた主婦の橋本好恵さん(仮名、73歳=東京・荒川区在住)は震えるほどのショックを受けた。告知をされるまで、自覚症状がまったくなかったからである。

「医師から問診を受けましたが、体重64キロは変わらないし、食事も普通です。微熱などもなかったし、息苦しいという症状もありませんでした」

 だからこそ、唐突な「肺がん」告知に動転してしまった。病院から帰宅する徒歩で15分ほどの道のりだが、どの道を歩いたのかまったく覚えていない。世の中のすべてが灰色に見えたという。

 その夜、橋本さんの夫(75歳)は激しく憤慨したという。

 橋本さんは1本もたばこを吸ったことがない。しかし夫は愛煙家だ。このとき橋本さんも夫も肺がんの発症はたばこ以外に遺伝や大気汚染、女性は女性ホルモンなどさまざまな要素が関係することを知らなかったという。

「主人は“俺は15歳のときから60年間、毎日、平均1箱20本のたばこを吸ってきた。なのになぜ俺が先に肺がんにならない!”と叫んでいました」

■病気の知識は何もなかった

 夫は翌日から、たばこを吸うときはジャンパーを羽織って外に出るようになったという。

 橋本さんは今年の正月が明けると、総合病院からの紹介状を持って「国立がん研究センター」(東京・築地)を訪ねた。

 担当医から今後の治療方針について次のように説明される。

「がんは、もう外科的治療が難しいほどに進行しております。最初、抗がん剤治療を行い、その後、放射線療法という併用治療を行っていきましょう」

 1月初旬から3週間入院し、抗がん剤治療を受けた。

 入院前、近所に住むがん治療経験者に会っていろいろなアドバイスを受けた。

「皆さんが経験したほど私には抗がん剤の副作用がなかったことに喜びました。髪が抜けるとか、食事ができないとか、痩せるとか、それがなかったのです」

 3週間の抗がん剤治療を受け、支払った治療代金は個人負担で約20万円だった。

 退院するとき、担当医師からこう声をかけられた。

「2月半ばから放射線治療を開始します。入院の必要はありませんが、毎週1回通院してください。まあ、半年ぐらいの治療期間をみてくださいね」

 完治を願い、橋本さんの肺がん治療が中盤に入った――。

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