気鋭の医師 注目の医療

美容皮膚科の皮膚再生技術を応用しED・AGAの最新治療を

古賀祥嗣特別顧問(左)とAGA治療器
古賀祥嗣特別顧問(左)とAGA治療器(提供写真)
古賀祥嗣特別顧問 銀座ソラリアクリニック(東京都中央区)

 美容医療では、皮膚の再生治療(肌質改善)などで「幹細胞培養上清液」(以下、上清液)を使った治療を行う施設が増えている。上清液とは、さまざまな細胞に分化できる「幹細胞」を培養した際にできる上澄み液のことだ。上清液には、幹細胞から分泌される数百種類以上のサイトカインや成長因子など多くの生理活性物質が含まれている。それを肌に浸透させることで、弾力がありキメの細かい皮膚の再生を促す。

 しかし、美容皮膚科の同院が行っている上清液を用いた再生治療は皮膚だけではない。2016年から男性のEDやAGA(男性型脱毛症)の治療にも応用を始めた。関連施設の総合病院で泌尿器科の主任部長を兼務する同院特別顧問の古賀祥嗣医師(写真)が言う。

「国内外の基礎研究では、組織の再生には幹細胞そのものよりも、分泌される生理活性物質の方が重要であることが数多くの論文で示されています。当院の上清液を用いた治療は分化の早い乳歯歯髄の幹細胞を使用しているのが特徴で、すべて院内のバイオ室で製剤しています」

 上清液を用いた治療を「再生医療」と呼称する医療機関もあるが、幹細胞自体は使わないので14年に施行された「再生医療新法」の対象外の治療法になる。

■AGAは3回で改善を意識

 EDの治療では、ペニスの根元に小さなヘアバンドをはめて、陰茎海綿体の左右に1回ずつ、計2㏄の上清液を注射する。超微細の針で打つので、通常の注射のような痛みはほとんどないという。

「対象は軽症~中等症の血管障害のEDです。勃起は、陰茎海綿体の血管内皮からNO(一酸化窒素)が放出されて、サイクリックGMPという物質が産生されて血管が拡張します。ところが血管障害で内皮細胞が傷むとNOが出にくくなる。上清液は、その傷んだ内皮細胞を修復するので、ED治療薬を飲む必要がなくなるのです」

 治療回数は週1回、4回で1クールが基本。この2年間で約20人の患者が受けているが、9割がED治療薬なしで国際勃起機能スコア(IIEF―5)の正常範囲内に改善しているという。30代くらいの若年層では1回の治療で満足する硬さになる患者もいるという。費用は1回、5万4000円(税込み)だ。

 同院は臨床研究にも取り組んでいて、EDに対する有効性は昨年3月に開催された第16回日本再生医療学会総会でも発表されている。

 AGAの方は、「メドジェット」と呼ばれる銃のような形をした治療器を使う。炭酸ガスのジェット噴射を利用して、先端0・03ミリの穴から上清液を噴出させて頭皮に浸透させる。薄毛の部分に40~50発を噴出させ、治療時間は15~20分。費用は1回10万8000円(税込み)だ。

「実施数はまだ10例ほどですが、3回(月1回)もやれば効果を実感できます。毛母細胞が活性化して勢いがつけば、その後はメンテナンスで年1回やるのでもいい。AGAの飲み薬はEDや不妊の原因になるので、併用は勧めていません」

 ちなみに同院で行う治療はすべて自由診療で予約制になる。

▽福岡県出身。1989年産業医科大学卒。東京女子医大付属病院に勤務後、移植医療のため米国オハイオ州クリーブランドクリニックに留学。東京医科大学病院などを経て、09年江戸川病院泌尿器科主任部長。16年から兼務。〈所属学会〉日本泌尿器科学会、日本性機能学会など。

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