末期がんからの生還者たち

大腸がん<3>「風に触れた手に激痛 副作用で手の皮が…」

岩井ますみさん
岩井ますみさん(提供写真)

 2009年1月、岩井ますみさん(当時45歳=千葉県市川市在住)は、「順天堂大学医学部付属浦安病院」(千葉県浦安市)で「大腸がん(下行結腸がん)ステージⅡ~Ⅲ」の手術を受けた。

 術後、3カ月おきに通院し、経過観察を聞いていた。3度目となる10月、不安が現実化する。

「転移の疑い」と診断された。再度、超音波(エコー)検査、CT画像検査、血液検査などを受診した結果、担当医師からこう告げられる。

「がんが肝臓に転移しています。まずは抗がん剤治療をし、経過を見て手術をしましょう」

 術後3カ月で仕事に復帰し、カラーコーディネーターの仕事も術前の状態にやっと戻ったときだった。

「私は仕事に戻れるだろうか、元の生活ができるようになるのか……」

 岩井さんは診察を終えた会計待ちの間に涙がこぼれた。

 3週間を1クールにする抗がん剤「TS―1」(経口薬で、オテラシルなど胃腸障害など副作用を軽減する3つの成分から製造されている)の服用をスタート。約1年間続けられた。

 幸い、副作用は仕事の量を減らす程度で済んだが、ひどい下痢に悩まされ続けた。11年10月下旬になって、「肝臓がん」の手術を行い、肝臓の一部を切除した。

 3週間後に退院。1カ月後から新たな「抗がん剤」治療が開始された。

 点滴による抗がん剤「エルプラット」を投与し、その後2週間は併用して抗がん剤「ゼローダ」を経口で服用し、その後は1週間のリカバリーという3週間1クールのゼロックス療法である。

 担当医師から事前に説明されたが、冷たいものに触れると痛みが出るという副作用がハンパではなかった。

「治療を終えて病院を出た途端、風に触れた手に激痛が走りました。副作用である手足症候群により、手と足の皮がむけてしまい、時々、足がつってしまう現象が起こったんです。また、点滴した後の2、3日は、ひと口、水を飲もうとしても耳の下にある骨に激痛が走り、首を絞められたような痛みが起こりました」

 まさにガマン比べのような抗がん剤治療だったという。

 途中で「UFT」という抗がん剤に切り替えてもらった。だが、岩井さんには合わなかったようで、自ら希望して抗がん剤治療薬を「ゼローダ」のみの治療に変更している。

 最初の手術を受けてから治療の歳月は、入退院を繰り返しながらすでに3年が経過していた。

 仕事も中途半端で、預金額も目減りしていた。精神的なストレスがたまり、もはや「うつ病」寸前である。岩井さんはメンタルクリニックを訪ねたこともあった。

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