みのもんたも苦しんだ 脊柱管狭窄症が疑われるポイント2つ

連載企画「愉快な“病人”たち」で脊柱管狭窄症について語った
連載企画「愉快な“病人”たち」で脊柱管狭窄症について語った(C)日刊ゲンダイ

 歩いていると足が痛くなる、しびれる……などの症状があれば、脊柱管狭窄症が疑われる。岩井整形外科内科病院・古閑比佐志副院長に聞いた。

 今月2日放送のTBS系医療バラエティー番組「名医のTHE太鼓判!」で俳優の布施博さん(59)が脊柱管狭窄症であることが判明した。

 布施さんは、2~3年前から歩きづらさを感じ、最近は階段を下りることに恐怖を覚えるなど、生活に支障をきたすレベルにまで症状が悪化。酔っぱらうと足に全く力が入らなくなる姿も番組で流された。

 脊柱管狭窄症といえば、タレントのみのもんたさん(73)も苦しんだ病気。紅白歌合戦の総合司会を終えた2006年正月に入院し手術を受けた。

「背骨の神経の通り道である脊柱管を取り巻く組織、黄色靱帯は老化などで厚みを増しやすくなります。それによって脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて痛みやしびれが生じるのが、脊柱管狭窄症です」

■対策が遅れると元に戻らないケースも

 脊柱管の狭くなり方は大きく分けて2タイプある。脊柱管を輪切りにして上から見た場合、全体的に狭くなっている「中心性狭窄」と、一部が狭くなり通り道が三角形のように見える「外側陥凹狭窄」だ。典型的な症状が異なる。

 まず中心性狭窄では、歩いていると片方、あるいは両方の足が痛んだりしびれたりして歩けなくなる間欠性跛行が起こりやすい。しばらく休むと症状は消え歩けるようになるが、歩き始めるとまた痛みやしびれが出てくる。一方、外側陥凹狭窄は、「片方の足の前側だけ」「両方の足の横側だけ」といったように、足の一部に痛みやしびれが起こる。間欠性跛行と違い、歩かなくても症状はあり、寝返りをうったり、体勢を変えたりすると、程度がひどくなる場合がある。

 中心性狭窄にしろ、外側陥凹狭窄にしろ、脊柱管狭窄症は、たとえば椎間板ヘルニアなどと比べると、症状の強さはそれほどではない。しかし、歩けなくなるなど日常生活に支障が出る。

 また、膀胱や直腸の働きに関係する馬尾神経が圧迫された場合、頻尿や残尿感、尿漏れ、便秘など膀胱・直腸障害が生じる。圧迫がひどく馬尾神経が“不可逆的な損傷”に至ると、元には戻らない。

「脊柱管狭窄症の最初の治療は抗炎症剤や鎮痛剤ですが、『歩き続けられず日常生活に支障が出る』『膀胱・直腸障害がある』ようなら手術を検討します。特に、膀胱・直腸障害はすぐに手術を受けるべきです」

 狭窄の程度と症状の強さは必ずしも一致しないため、画像検査の結果だけでは判断できない。高齢男性では、頻尿や残尿感がある前立腺肥大も疑われるので、鑑別診断も必要だ。

 脊柱管狭窄症の手術には、切開手術と内視鏡下手術がある。古閑副院長が行っているのは、内視鏡の中でも直径が細い内視鏡MEL(直径16ミリ)やPELD(直径7ミリ)を用いた内視鏡下手術だ。

 MELは主に中心性狭窄に対し、PELDは外側陥凹狭窄に対して行う。

「いずれも全身麻酔で行います。MELは入院期間が4~7泊、PELDは2~3泊になります。MELもPELDも保険適用です」

 微小内視鏡PELDによる脊柱管狭窄症の治療は非常に高い技術力が求められる。

 この数年、PELDによる脊柱管狭窄症手術を行う医療機関が少しずつ増えているが、一方で、神経損傷の報告もやや増えている。内視鏡下手術を受けるなら、手術件数の多い医療機関を選ぶべきだ。

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