医者も知らない医学の新常識

「カルシウムが不足するとイライラする」は本当か?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 カルシウムが不足するとイライラしたり怒りっぽくなるというのは、よく耳にする健康知識です。しかし、最近ではそれは嘘情報だとする記事もよく見かけます。どちらが正しいのでしょうか?

 カルシウムというのは骨の材料ですが、それ以外に血液や細胞の中のカルシウム濃度が、細胞の働きに重要な役割を持っていることは事実です。特に感情などに影響する脳の視床下部という場所は、神経細胞の周りのカルシウム濃度に鋭敏に反応していることが、動物実験などでも証明されています。

 月経前症候群といって、月経前の女性では気持ちが不安定になって、イライラしたり怒りっぽくなりやすいことが知られていますが、カルシウムの不足でそうした症状が起こりやすくなり、カルシウムのサプリメントを取ることで、症状が軽減することも報告されています。

 また、カルシウム不足でうつ傾向になりやすい、という報告もあります。

 カルシウムが不足するとイライラするというのは、決して間違った知識ではないのですが、もっぱら科学的なデータがあるのは閉経前後の女性だけで、男性でも同じようなことがあるという根拠はないのが実際なのです。

 そんなわけでカルシウムとイライラとの関係については、一応の根拠はあるのですが、それほどはっきり証明はされていない、というくらいが正しいようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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