食事のたびに大量の汗が…そんな人には思わぬ病気が潜む

食事中の顔の汗は要注意
食事中の顔の汗は要注意(C)日刊ゲンダイ

 激辛のカレーやラーメンを食べると誰もが顔や頭の中、唇の上や鼻の頭などに汗をかく。しかし、汗の量が異常に多かったり、普通に食事をしただけでも滝のような大量の汗を滴らせる人は病気が隠れていることもあるから要注意だ。サラリーマンの病気に詳しい、弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に話を聞いた。

「激辛のカレーやラーメンを食べたときに出る汗は、酸味、塩味、甘味などの味覚成分も原因ですが、一番の理由は辛味成分です」

 本来、辛味は味覚要素には含まれないが、辛味による汗を含め、味覚性発汗と呼ぶ。

「味覚は口の中で体に良いものと悪いものを感知するセンサー。甘味、苦味、酸味、塩味、うま味を味覚神経によって脳へ伝えます。一方、辛味は渋味と同じで味覚神経以外で伝わります。痛覚や温冷覚に近い感覚刺激です」

 この辛味成分は、舌や口の中の粘膜を刺激して反射的に汗を出す。

「辛子の主成分はカプサイシンという物質です。これを含んだ食べ物を口にすると口腔内にある高温に反応する温度センサーが刺激され、その信号が神経回路を介して痛みと熱の感覚を脳に伝えます。ところが、その途中で脳の体温調整中枢から顔の汗腺に下向する発汗神経を刺激して、反射的に顔に汗が出るのです」

 激辛ラーメンのスープを飲むと汗の量が一層多く出るのは、カプサイシンの「痛み」とスープの「熱」がダブルで高温センサーを刺激するからだ。

「このシステムは口腔内を極端な高温などから守るためのものですが、別の効果を生みます。顔や頭に汗をかくことで、汗をかいた部分の皮膚が冷却され、冷えた血液が脳に流れ込むのです。結果、脳がスッキリします。赤道直下の国々や夏の暑い季節にアツアツの辛い食べ物が好まれるのは、これが理由でしょう」

■耳下腺の手術をした人も注意

 もちろん、食事をすると、体内での熱産生量が増えて汗をかく。とくに栄養素の中ではタンパク質が最も多く熱産生を行うため肉を食べると汗をかきやすい。

「こうした汗は誰にでも起こる生理現象のひとつですが、その程度がひどい『味覚性多汗症』は、味覚の刺激が過度に働くため、通常の味覚性発汗に比べて異常なほど分泌されます」

 この味覚性多汗症を引き起こす病気として知られているのが「Frey症候群」。耳の前下方にある耳下腺には唾液を分泌させる耳介側頭神経と、顔を動かす顔面神経が走っている。そこにできる腫瘍などの手術によって耳介側頭神経が損傷し、その後、誤った経路で神経が再生され、数年後に味覚性多汗を発症してしまう場合があるという。

「それ以外で注意したいのが糖尿病性神経障害です。これが味覚性多汗症を招く場合があります」

 糖尿病による神経障害は、網膜症や腎症と並ぶ、糖尿病の3大合併症のひとつだ。

「自律神経が障害されると、低血糖時に交感神経がうまく働かなくなり、無自覚性低血糖になりやすくなります。また、急に立ち上がったときにめまいや立ちくらみなどを起こし、失神を起こす場合もある。胃の動きが悪くなって便秘や下痢を起こす人もいます。熱いものや辛いものを食べると顔に汗をかくのは味覚性発汗で、生理的な現象ですが、食事ごとに大量の汗をかくという人は糖尿病の進行を疑う方がいいかもしれません」

 気温がグングン上がるこれからの季節は汗をかくのは当たり前のように感じるが、食事中の顔の汗は注意が必要だ。

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