カラオケ療法

<4>高齢者に勧める医師は多い 糖尿病に効くこれだけの理由

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 国民病として定着している糖尿病の怖さは、失明、血管・神経障害(足の壊死)などの重い合併症を起こすことだ。主な治療法は食事制限、運動、薬物の3点。ところが高齢者ほど、ジョギングや散歩、水泳など体を動かすことが難しい。そのため、とくに高齢者にカラオケを勧める医師は少なくない。そのひとりが「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長だ。林院長はこれまで糖尿病患者を招き、何度か「カラオケ大会」を開催。糖尿病患者のカラオケは、運動療法に近い効果が得られるという。

「姿勢を正しくして歌う時の運動量は、消費されるカロリーが安静時の約2倍と言われています。それに歌は、基本的に腹式呼吸で歌うので、スポーツなどと同じように心肺機能が上がり、横隔膜の上げ下げが速く、ゆっくり心臓を刺激することにもなります。結果、血流を促進することになり、酸素が体の隅々まで運ばれます。ですからカラオケは糖尿病の運動療法として、年齢に相応した適切な運動なのです」

 最近の研究では、運動して筋肉を収縮させるとインスリンとは別のルートで血液中の糖を吸収し、糖尿病の予防に役立つことがわかっている。そのため、全身の筋肉を使うカラオケは糖尿病効果が期待できるかもしれない。

「筋肉細胞の中にはAMPキナーゼという酵素が含まれています。人が運動して筋肉を動かすと体内でつくられたATPというエネルギーが使われ、ADPという物質に変化し、さらにはAMPとなります。AMPキナーゼはその動きを監視し、AMPの量が増えると血液中の糖を筋肉細胞に取り込み、低下したATPのエネルギーを補充しようとするのです」

■夢中になれば食欲も抑制

 また、カラオケは食事療法にも結び付くという。糖尿病が進行すると、食事制限が厳しくなる。食事はいちいち量を量ってから食べるというケースも多い。もう一口が許されないのだ。

「誰でも楽しいことに夢中になって食べるのを忘れた経験があるでしょう。これは脳内が快楽ホルモンであるドーパミンで満たされるからです。歌を歌うことによって得られる快感は、まさにこのドーパミンの分泌によるものです。それが、食欲抑制につながるのです」

 カラオケが糖尿病患者の運動療法に通じるといっても、ただ、マイクを握って歌えばいいわけでもない。周囲には必ず聴衆者がおり、そのため最低限のエチケットも考慮する必要がある。

 音楽機関誌に「カラオケと健康」をテーマに連載している佳山明生さんは、「氷雨」のヒット曲でも知られるベテラン歌手。「カラオケ教室」を開くかたわら、主に関東圏にある老人ホームなどの招きで、歌指導に奔走している。

「最初は黙って聞いていた高齢者の方もマイクを握っていただくと徐々に歌うようになります。そうなると観客の目を意識してほめてもらえるよう、姿勢を正し、感情をこめて歌うようになります。単に運動になるだけでなく、コミュニケーションもとれる。カラオケは健康の基本と考えてもいいと思います」

関連記事