クスリと正しく付き合う

緑内障の目薬をまつ毛美容液として使用するのはリスク大

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回は女性に特有の薬についての副作用を紹介しました。女性の関心事といえば、「美容」も挙げられます。この美容に関して、誤った使い方をされている薬があるのです。

 例えば、昨年は「ヒルドイドソフト軟膏」(ヘパリン類似物質クリーム)が美容クリームとして乱用されていることがニュースでも取り上げられ、話題になりました。美肌効果があるのかもしれませんが、処方箋医薬品ですから、本来の使用目的から外れて処方してもらうことは大きな問題です。

 同じく、美容目的で誤った使い方をされている薬があります。それも“副作用を利用している”ケースがあるのをご存じでしょうか。

「ルミガン点眼液」(ビマトプロスト)は眼圧を下げる効果があり、緑内障の治療に用いる目薬です。この目薬を「まつげ美容液」として使用するという、まさに乱用がはやっているから驚きです。もちろん、処方箋医薬品ですので、医師が処方しないともらえません。しかし、インターネットで「ルミガン」を検索すると、まつげ美容液や、まつげ育毛剤として個人輸入した商品が販売されているのです。

 ルミガンの臨床試験時の結果では「46%にまつげの異常(伸展)が見られた」と報告されていて、実際に緑内障の治療をしている患者さんのまつげが伸びているのは事実です。このまつげ伸展の副作用を利用して、美容目的で使っているわけですが、乱用以外の何物でもありません。

 自己責任で使用する分には構わない、という意見もあるでしょう。しかし、ルミガンには色素沈着や結膜炎といった他の副作用もあります。眼圧が下がりすぎると眼球がしぼんで、視界が不安定になります。そうしたリスクを十分に理解し、単にまつげが伸びるだけのオイシイ話ではないことを分かった上で使っている人はほとんどいないでしょう。

 本来の目的から外れた医薬品の使用は危険なのです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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