カラオケ療法

<5>歯学部が実証 歌うことで嚥下率が高まりストレスも軽減

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、関心を集めている「誤嚥性肺炎」の予防対策として、身近にある「カラオケ」にも効果があることが分かってきた。

 口から物をのみ込む働きを嚥下機能という。加齢とともにこの機能が低下する。結果、口から食道に送り出される食べ物や飲み物、あるいは唾液が、空気が入る肺に入ってしまうのだ。

 こうした症状を「誤嚥」といい、誤嚥性肺炎は、誤嚥によって細菌も器官を通して肺に入り込み、炎症を起こす病気だ。

「カラオケ歌唱の口腔機能に与える効果」について、「鶴見大学歯学部」(神奈川県横浜市)が以下のような検証を行った。

 試験期間は8週間。被験者に週に4回、1回1時間程度カラオケで歌ってもらい、「嚥下機能」と「免疫力」に関するデータを検討した。

 嚥下機能のテストは「反復唾液嚥下テスト」(30秒間に何回反復嚥下できるかの測定=RSST)、もうひとつは「咬合力テスト」(噛む力を専用機器で測定)の2つである。

 解析結果は、開始前と開始8週間後では、いずれも数値が上昇し、嚥下機能を高める数値を示した。

 この研究を行った斎藤一郎教授が言う。

「老化は口からといわれておりますが、口の周りにある筋肉が、高齢に伴って低下し、嚥下機能を弱らせてしまいます。それを長期間のカラオケで、口周囲の筋力が補強され、さらに唾液の分泌も促し、ゴックンというのみ込む機能を高めるのでしょう」

 同大では他に「歌の長期効果を検証するテスト」として、被験者13人(年齢50~60歳が中心)に、「誤嚥性」検証のときと同じテスト(カラオケを週に4回、8週間継続)をした。

 まず「免疫力測定(免疫担当細胞であるリンパ球系の細胞がどれほど増加するか)」では、明らかに増加した。

 また「歌唱によるストレスマーカーの変動」では、「コルチゾール」(副腎皮質から分泌されるホルモン。過度なストレスを受けると分泌量が増加する)が、開始前の6.500gμ/デシリットルから、開始8週間後に6・000gμ/デシリットルまで減少している。

 同じく「アドレナリン」(副腎髄質から分泌されるホルモン。過度なストレスを感じ続けると血中のアドレナリンが増える)も開始前の0.0400gμ/ミリリットルから、開始8週間後には0.0300gμ/ミリリットルに減少した。

「これらカラオケの効果は、ストレス社会にどう対応するかという目的で検証したもの。カラオケ? 私も時々、マイクを握ることがあります」(斎藤教授)

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