喉が詰まるような違和感は「脳梗塞」の予兆かもしれない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 喉が詰まったような違和感を覚えた場合、脳梗塞の予兆の可能性がある。国立病院機構東京医療センター感覚器センター(耳鼻咽喉科学)角田晃一医師に聞いた。

 角田医師が市中病院に勤務していた時、内科から80代の患者が紹介されてきた。「扁桃炎ではないか」との見立てだったが、角田医師が口腔内を見ると、1カ所、咽頭後壁(口の突き当たり)がボコボコ腫れ、脈と同期して拍動していた。扁桃炎ではなく、口の中への頚動脈の変位走行異常(以下:走行異常)だった。

「その理由として考えたのは、高齢で前かがみの姿勢になると、胸、胸郭、頭のてっぺんの距離が近くなり、首が短くなる。静脈は縮むことができますが、動脈は加齢で硬くなっていて縮まず、抵抗のない口の中で不自然に曲がるしかなかった、ということです」

 すると、血液の流れに変化が起こる。血管が曲がっているため、あるところではせき止められ、あるところではドッと流れる。後者の時、その流れの勢いで血栓が一気に脳へ飛び、脳梗塞を起こす可能性がある。

「この患者には『脳梗塞を起こすリスクがあるからすぐに内科へ行きましょう』と紹介状を書きました。ところがその患者はすぐに行けなかった。すると6日後、脳梗塞を起こして病院へ救急搬送されました」

■高齢で身長が3センチ以上縮んだ人は危険

 角田医師は、脳梗塞と動脈の変化を調べるために、同センターと国立病院機構の計12施設の患者のデータを分析した。対象は65歳以上85歳未満で、脳梗塞患者72例と、めまいや難聴で受診したが脳梗塞は否定された患者163例。いずれも、「そもそも脳梗塞のリスクが高い人」である心房細動、不整脈、心臓弁膜症、糖尿病、その予防治療のアスピリンやワーファリンといった血液をサラサラにする薬を処方されている人を省いた。

 その結果、脳梗塞患者は87・5%に頚動脈の走行異常(曲がっている、蛇行しているなど)があったが、非脳梗塞患者は8・6%に過ぎなかった。

 さらに、身長3センチ以上減は脳梗塞患者で76・4%、非脳梗塞患者で19・6%。頚動脈の走行異常と身長3センチ以上減の両方がある人は、脳梗塞患者の87・5%、非脳梗塞患者の6・75%だった。

「つまり、脳梗塞と頚動脈走行異常、身長3センチ以上減は密接な関係にあるということ。身長が減少するのは、加齢で前かがみの姿勢になっているからです。自覚症状としては、最初の2カ月は座ったり立ったりした時に頚動脈が喉の突き当たりを移動するため、喉の違和感を覚える人が多い。頚動脈変位走行異常が何カ月も続くと、変位走行異常が固定してしまい、自覚しなくなる」

 ベテラン耳鼻咽喉科医が意識して脈を取りつつ口腔内の検査をすれば、走行異常した拍動する腫れは見つかる。前かがみの姿勢で身長が若い時と比べて3センチ以上縮んだ人なら、脳梗塞のリスクを疑って口の中を調べたほうがいい。

「頚動脈の走行異常が起こっていれば、アスピリンやワーファリンなどの服用をすることで、脳梗塞が予防できるかもしれません」

 冒頭の患者のような例があるので、姿勢が悪くなりのどの違和感がある人は、医師に行くのは、できる限り早めに。頚動脈走行異常を指摘されれば、何をおいてもすぐ病院で精査を。

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