がんとは何か

ヘビースモーカーでもがんにならない人がいるのはなぜ?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 喫煙はがん発症の最大の原因だ。日本の研究ではがんになった人のうち男性で30%、女性で5%がたばこでがんになったと考えられている。

 しかし、ヘビースモーカーでも一生をがんとは無縁に過ごす人もいる。なぜか? 

 たばこの煙には5000種類以上の化学物質が含まれており、その中には60種類以上の発がん物質が含まれているといわれる。こうした有害物質は、たばこを吸うことで肺から血液を通じて全身の臓器に運ばれ、各細胞のDNAを傷つける。結果、細胞ががん化する。一般的にはそう考えられている。

 国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「発がんにはきっかけとなるイニシエーターと、それを促進するプロモーターが必要です。喫煙の場合、前者がたばこに含まれる発がん物質で、後者が喫煙による慢性炎症ということになります」

■修復酵素の能力の違いも関与か

 興味深いのは、たばこに含まれる有害物質は、そのままの状態では発がんのイニシエーターにはなれないと考えられていること。あくまでも体内で代謝される過程で、発がんを導きやすい活性代謝物が生成され、それがDNAと結合。遺伝子異変を起こしてがん化が始まると考えられているという。

「薬物や毒物を体外へ排出するための物質にする反応を薬物代謝、それを促すために欠かせない酵素を薬物代謝酵素といいます。たばこの場合、CYP2A6と呼ばれる薬物代謝酵素が、たばこの煙に含まれるニトロソアミンと呼ばれる発がん物質を活性化することがわかっています。ただし、CYP2A6の遺伝子には遺伝子多型がある。そのため型の違いにより、同じ喫煙者であってもがんになりやすさが決まっているのではないか、と考えられているのです」(一石英一郎教授)

 もちろん、たばこががんを引き起こす原因は他にもさまざま考えられる。

 例えば、修復酵素の機能の違いだ。

「ニトロソアミンという発がん物質が活性化され、DNAに結合して複数の遺伝子が傷ついたとしても、すぐにがんを発症するわけではありません。傷ついた遺伝子のほとんどは、修復酵素によって修復されるからです。この修復酵素の能力の違いも、がんリスクを大きく左右することになります」(一石英一郎教授)

 なお、たばこは肺がん以外に、胃がん、食道がん、膵臓がん、子宮頚がん、肝がん、大腸がんなどと関係することがわかっている。今後、たばこによるがんについては、新たな発見が報告されるかもしれない。

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