生活と健康 数字は語る

同年齢の平均値にすると…高血圧患者は増えているのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 9月11日に国民栄養調査の平成29年の結果が公表されました。ここからはこの新しいデータも利用しながら書いていきます。

 20歳以上の収縮期血圧の平均は、わずかに低下傾向にありますが、ほとんど変化なく、男性135㎜Hg、女性130㎜Hgくらいで一定しています。

 しかし、10年前と比べれば、高齢者の割合が増えていますから、高齢になるにしたがって血圧が上がることを考慮すれば、血圧の平均値は下がっていることが予想されます。

 事実、年齢調整した収縮期血圧の数字が同時に示されていますが、これは年齢構成が同じだと仮定したときの血圧の平均を示しており、同年齢での血圧の平均の推移を示していると考えてよい数字です。

 その年齢調整した収縮期血圧の平均は、この10年で男性では133.4㎜Hgから130.3㎜Hgに減少、女性でも126.1㎜Hgから123.8㎜Hgと、いずれも3㎜Hg程度低下しています。

 日本人の血圧は同年齢の人で見ればやや低下していることがわかります。

 以前、本欄でも取り上げましたが、テレビでは「130㎜Hg以上は高血圧です」なんて血圧の危険をあおっていますが、高血圧の人が増えているというよりは、むしろ減っているなかでの出来事です。これはうがった見方をすれば、薬や健康食品を売りたいメーカーが、高血圧患者が減っているので、より低い血圧の人も高血圧に含めて薬や健康食品をさらに売りつけたいことの表れかもしれません。気を付けましょう。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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