生活を変えれば治る 「痔」持ちが冬に警戒すべき5つの大敵

日本人の3人に1人がかかっている
日本人の3人に1人がかかっている(C)日刊ゲンダイ

 痔は日本人の3人に1人がかかっている国民病だ。ところがほとんどの人は肛門に多少の違和感があっても放りっぱなし。治療を始めるのは、いよいよ痛みに耐えきれなくなった時で平均7年かかるとのデータもある。痔持ちにとって冬は大敵。痔を悪化させる状況がゴロゴロしている。警戒すべき5つの大敵と対処法を日本大腸肛門病学会肛門領域指導医で、「自分で痔を治す方法」(アチーブメント出版)の著者でもある平田肛門科医院の平田雅彦院長に聞いた。

「肛門は正式には肛門管という長さ3センチの小器官です。痔には3つのタイプがあります。最も多いのが痔の6割を占めるいぼ痔です。正式には痔核といい、肛門の周辺に出来た動静脈瘤の一種です。肛門の奥に出来て痛みがほとんどない内痔核と肛門の出口近くに出来て痛みを伴う外痔核とに分かれます。内痔核は大きくなると排便時に肛門の外に出るようになります。これが脱肛で、症状が進むと指で押さないと戻らなくなります」

 切れ痔(裂肛)は硬い便が肛門を出るとき、肛門上皮が切り裂ける状態をいう。便秘や下痢が原因となることが多く、内痔核を併発している人も多い。裂肛を繰り返すと肛門狭窄になり、便秘気味な人がますます便秘になり、鉛筆ほどの細い便しか出なくなる。

 痔ろうは疲れやストレスなどで免疫力が落ちたときに出来やすい。肛門腺が細菌感染して膿がトンネルを形成して肛門の内外をつないだ状態をいう。下痢気味の人にリスクが高く、男性に多い。がん化しやすいことが知られている。

■冷え

 冬になって気温が下がって体が冷えてくると肛門周辺の血管が収縮して血液の循環が悪くなる。すると、肛門の周辺がうっ血して炎症が起こる。これがいぼ痔を悪化させる原因のひとつだ。

 室温が低く設定されている生鮮食品売り場やコンピューター機器がある研究室などで働く人は気をつけた方がいい。

「冷えは自律神経を乱し、下痢や便秘を起こし、裂肛や痔ろうのリスクも高まります。使い捨てカイロを背中や腰骨、足先に貼るといい。入浴はシャワーで済ませず湯船につかって肛門を中心に体を温めましょう」

■座りっぱなし

 年末にかけて残業が増え座っている時間も長くなる。寒くて昼休みも部屋にこもりがち。体重が肛門に長時間かかるうえ、運動不足も重なって肛門周辺のうっ血リスクが高くなる。

「理想は通勤時にひと駅手前で降りて歩いたり、就業後に泳いだりすること。ほかに就業時間内に1時間に1度、10メートル歩くことを心がけましょう」

■お酒

 接待や忘年会のシーズンで飲酒の機会が多いが、お酒は痔にとって大敵だ。アルコールには末梢血管を拡張する働きがあるので血流は良くなるが、それは体の表面の話。内臓は逆に血液が不足するため血流が悪くなり肛門周辺はうっ血してしまう。

「お酒には炎症を起こす物質アルカロイドが含まれており、お酒で下痢になる人も多い。つまり、飲酒は二重の意味で痔の悪化に拍車がかかります。なるべく控えるべきですが、飲む場合はアルカロイドが含まれる日本酒やワインなどの醸造酒でなく、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒にしましょう」

■便秘

 痔を発生させる最大要因だが、冬は残業によるストレスや寝不足のためなりやすい。とくに女性は下痢に悩む男性と違って便秘になりやすいので要注意だ。

「生理前に分泌される女性特有のホルモンは腸の動きを鈍らせる働きがあります。しかも女性は食事量を減らすダイエットをしがちで、便の量が減りやすい。便意も我慢する傾向にあり便秘になりやすいのです。日頃から納豆、味噌、ヨーグルト、甘酒などの発酵食品や食物繊維の多い食事を心がけましょう。塩を塩麹にするのもお勧めです」

■下痢

 眠気覚ましにコーヒーをがぶ飲みする人もいるが、過剰な摂取はやめた方がいい。コーヒーなどに含まれるカフェインを取り過ぎると交感神経が興奮しすぎて胃腸の動きが悪くなり下痢をすることがある。とくに男性はストレスが下痢として表れやすいので要注意。

「コーヒーを控えることはもちろんですが、就寝2時間前は何も食べないこと。どうしても食べたいときは湯豆腐や白身魚など軽い食べ物にして、脂っこい物は避けましょう。それでも下痢が止まらなければ1日5食の分食で1食あたりの食事量を減らすことです」

 痔は手術が必要なケースは多くない。3カ月ほど生活習慣を見直せば治ることが多い。肛門に異変を感じたら恥ずかしがらずにすぐに専門医に診てもらうこと。痔と思ったら直腸がんのケースも増えている。

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