ダウンJKや羽毛布団で乾いた咳が…アレルギー性肺炎を疑う

命に関わることも
命に関わることも(C)日刊ゲンダイ

 全国各地で初雪が観測され、いよいよ本格的な冬がやってきた。先週末、押し入れやタンスにしまい込んでいた羽毛布団やダウンジャケットを慌てて引っ張り出した人も多いのではないか。中には空調や加湿器を使い始めた人もいるだろう。そこで気をつけたいのが、アレルギー性の肺炎だ。この時期、注意したいのは「鳥関連過敏性肺炎」や「空調症」「加湿器肺」など。発熱、乾いた咳や息切れといった風邪の症状が長く続き、肺の中に肉芽腫ができる場合も。放っておくと肺組織が壊れて命を失うこともある。「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に聞いた。

 通常、肺炎というと細菌やウイルスなどが肺の奥にある肺胞などに感染して起きる。ところがカビや細菌の一種、ホコリや塗料、動物の体毛やキノコの胞子などを繰り返し吸い込むことでアレルギー反応が起き、肺炎になる場合がある。それが過敏性肺炎だ。発症の引き金となる抗原は100以上あり、鳥関連過敏性肺炎は布団やダウンジャケットに使われている鳥の羽毛やフンに含まれるタンパク質が抗原となる。空調症や加湿器肺は増殖した細菌や真菌が原因だ。日本ではトリコスポロンと呼ばれる真菌による夏型過敏性肺炎が最も多く、それに次ぐのが鳥関連過敏性肺炎や加湿器肺などといわれる。

「そもそも過敏性肺炎は間質性肺炎のひとつであり、発症すると空気の取り入れと放出を担う気管支や、血液中に酸素を送り込み二酸化炭素を排出する肺胞などが広域に、しかも同時に炎症を起こします。肺の間質とは肺胞隔壁や血管やリンパ管などのことで、そこが炎症で腫れたりむくんだりすると、肺の収縮力や酸素吸収力が弱くなります。その結果、酸欠状態になりやすく、階段を上ったり、運動したりすると息切れするようになるのです。放っておくと肺胞が徐々に線維化して機能を失い、血液での酸素と二酸化炭素の交換ができなくなる。命を失うことさえあります」

 基本的に過敏性肺炎は増悪と寛解を繰り返しながら病状がゆっくり進む。ところが、その途中にインフルエンザなどのウイルス感染や細菌感染を起こすと急激に病状が悪化し、重篤な状態に陥ることがある。それだけに、一刻でも早く診断・治療することが大切だ。

「ところが過敏性肺炎は風邪と症状が似ているため、最初から疑ってかからないと分かりづらいといわれています。症状は風邪と同じで、くしゃみや咳、発熱です。風邪などの感染症の咳と違って痰が絡まない、乾いた咳が出ることだとされています。また、過敏性肺炎を胸部エックス線や胸部CT画像で見ると、感染症の肺炎と違って、すりガラス様陰影と呼ばれる特徴のある画像が見られます」

 最近では「原因不明の肺炎症状」の場合、病気の原因となる物質を探し出すため、アレルギー抗原を見つける血液検査をする医療機関もあるが、多くはない。

■症状によってステロイド剤も

 感染症による肺炎の場合、治療には抗生物質や抗ウイルス薬といった薬剤が使われる。

 一方、過敏性肺炎の治療は、まず抗原を見つけて、その抗原を避ける抗原回避が行われる。さらに環境に原因がある場合は環境改善を行い、それらとともに薬剤治療が施される。

「羽毛が原因の場合は、羽毛布団や羽毛が使われているダウンジャケットの使用や、鳥の飼育を中止します。空調や加湿器が原因の場合は運転を中止して清掃します。それだけで症状が改善する人もいますが、症状がひどい場合は、アレルギー反応を抑制するためにステロイド剤を使うことになります」

 冬に風邪をひくのは当たり前。ちょっとした熱や咳くらいでは病院に行かない人も多い。また、病院に行っても医師が鳥や真菌などのアレルギーによる過敏性肺炎だと気づかないケースもある。

 乾いた咳が長く続いて治りが悪い場合は過敏性肺炎を疑い、医療機関にかかった際は「鳥を飼っている」「羽毛のダウンジャケットや布団を使っている」「加湿器を出した」などということも話してみることだ。

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