発達障害とゲーム依存

なぜ「ゲーム障害」の患者にADHDの人が多いか 医師が解説

いまのオンラインゲームには明確なゴールがない
いまのオンラインゲームには明確なゴールがない

 世界保健機関(WHO)から正式に疾患と認定された「ゲーム障害」。その患者には、発達障害の人が多い傾向がある。特に「注意欠如・多動性障害(ADHD)は、ゲーム依存となる上での大きなリスク要因だ」と、久里浜医療センター院長の樋口進医師は言う。なぜゲーム依存にADHDの人が多いのか、樋口医師に解説してもらった。

「ADHDはAD(注意欠如障害)と、HD(多動性障害)に分かれますが、特にゲーム依存と合併しやすいのはADですね。まず傾向として、AD患者は退屈さを嫌う傾向がありますが、オンラインゲームは片時もプレーヤーを退屈させないように、さまざまな仕掛けを凝らしています。それに加えて、これはADとHD双方に言えるのですが、強化要因にすぐなれる傾向があります。つまり、スポーツや普通の趣味だと、面白いと一時思っても、すぐそれになれてつまらなくなってしまう。しかし、ゲームは絶えず新しい強化要因、つまり面白さを提供してくるので、飽きることなく続けられるのです」

■目の前の利益に飛びつきやすい

 かつてゲーム機でプレーしていたRPGなどといったゲームには、クリアというゴールがあったが、いまのオンラインゲームには明確なゴールがなく、いつまでも続けられる。さらに、運営側は定期的にゲーム内容をアップデートして、新しいキャラクターや舞台、アイテムなどを提供し、いつまでもプレーヤーを飽きさせないように絶え間なく刺激を与え続ける。

「また、ADHDの人は遅延報酬を嫌うということも、ゲーム依存と合併しやすい要因のひとつです。これはたとえばいますぐ100円もらうのと、1日後に1000円もらうのでは、いますぐ100円をもらうほうを選んでしまうように、目の前の利益に飛びつきやすい性質をさします。ゲームに熱中しすぎて学校に行かなくなると、将来的に困ることになることまで頭が働かず、目の前の刺激を優先してしまう。いまほしいアイテムを入手するために高額の課金をしてしまうのも、これが原因です」

 さらに衝動のコントロールが苦手なことや、こだわりがあることも、ゲームにはまりやすく、抜け出しにくい傾向を強化していると、樋口氏は言う。

「あとは、発達障害の人全般に見られる、現実社会に対する不適応ですね。対人関係がうまくいかなかったり、不注意などが多くて注意されることに彼らは日頃多くの違和感を持っていますが、ゲームの世界では仲間をつくったり、レベルを上げて成長したりということがすんなりできてしまう。そのことが、発達障害の人のゲームへのとらわれを強化し、結果的にさらに現実社会への適応を悪くしてしまう傾向は確かにあると思います」

(フリージャーナリスト・里中高志) 

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