性感染症最前線

性器クラミジア<2>保険診療医では複数部位の検査は難しい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 クラミジアに感染しても男性の半数は症状が出ない。女性ではさらに分かりにくく、症状が出る人は20~30%くらい。しかも症状が出たとしても軽く、女性では「おりものの増加」「下腹部痛」「不正出血」「排尿痛」「性交痛」などだ。

 いずれにせよパートナーが感染していることが分かったら、症状がなくても早く検査を受けた方がいい。同時に治療をしなければピンポン感染を繰り返し、いつまでたっても治らないからだ。検査は性感染症専門の医療機関で受けることが肝心。自由診療の施設が多いが、それには理由がある。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「クラミジアの感染経路は性器のみならず、咽頭、目、肛門と多岐にわたります。しかし、保険診療では1度の受診で1部位の検査しか認められていません。ですから保険診療の施設では、たいがい尿やおりものを検査して終わりにしてしまう。性器の部分が陰性でも、咽頭に感染していればパートナーにうつしてしまいます。自由診療なら、1度に疑われる複数の部位を検査できるのです」

 直腸への感染は肛門性交でうつることが多い。しかし、女性では普通の腟性交でも起こりうる。腟と肛門が近いため、セックス時に病原体を含んだ体液が腟から垂れて肛門から直腸へ感染する場合があるという。

■目を感染路にする“顔射”

 また、AVのプレーで見られる“顔射”は目への感染経路になる。病原体が目に入ると結膜炎になり、目と鼻をつなぐ鼻涙管を通って咽頭にも感染する。

 それだけでなく、病原体が喉と耳をつなぐ耳管を通って中耳炎になることも。耳鼻咽喉科で中耳炎を治してしまえば、パートナーの感染には気がつかない。いずれも性感染症の専門医でなければ見落とされてしまう感染経路だ。

 女性の子宮頚管の感染は病原体が子宮の奥に入っていく(上行性感染)ので、放置していると怖い事態を招く。

「卵管炎を発症すると卵管が細くなって、子宮外妊娠を起こすことがあります。そして、卵管が破裂すると激痛と多量出血で失神します。女性がトイレに行って戻ってこない場合は要注意です。トイレで倒れていて、救急車で運ばれるケースも珍しくありません」

 病原体がさらに腹腔内に侵入すると「骨盤腹膜炎」の原因になり、上腹部に感染が広がると劇症の「肝周囲炎」を発症する危険性もあるという。女性のクラミジアは合併症が怖いのが特徴だ。

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